お知らせ製作の時間

挽き割り、そして今だけリクエスト

当然ながらドアリラにもその形などで人気、不人気があって、展示会から今日までの約5か月という時の流れの中で売れ筋というものも見えてきました。

現在、12月にリクエストで作ったハルニレ(春楡)材によるD-05 horn leftが現品1点のみ、それにE-02 sakura(ハルニレ)現品2点のみ、品薄になっているのはこの2種です。

で、sakuraに新たなリクエストが入りましたので、それに応えるべく(ちょうどよい具合に手持ちがある)サクラ(桜)材による、表面の板のための挽き割り作業に入りました。

このサクラ材は乾燥が進んでよい具合に仕上がったもの(含水率15%未満)を知り合いに分けてもらったものですが、2度挽きされたもののようです。
乾燥の仕上がりの板の厚みは約5センチでしたので、最初の挽き割りでは2寸(約6.06センチ)だったのではと思われます。
サクラなどの広葉樹は乾燥の経過にしたがってどうしても捩じれや歪み(木の暴れ)が生じます。それは、雨や雪や風などの過酷な環境に耐えるための樹木自身の防御機能なのだろうと思います。そのため一旦乾燥したものをさらに挽いて、平面を出して使えるようにするのです。それが2度挽きです。
慎重を期して、3度挽きというのも聞いたことがあります。

厚みが5センチ(幅がその2倍以上) のものを挽いて、薄い板を取るというのは危険な作業となります。それは丸ノコ盤を滑る底面の幅が5センチではいかに手押しガンナで直角出しをしていたとしても不安定感は免れません。
みすみす大けがを覚悟でやるわけはいかないし、指を落としたくはありませんしね。

で、こういう場合の挽き割りの工夫としては大きく3つあります。

工夫のひとつは、厚みが5センチなら2枚の板を接着してより厚みのあるブロックを作ることです。厚みが倍の10センチとなるともう十分な安定感です。
木工用ボンドを接着面に敷いて合わせ、Fクランプで締め付けて圧着して2日ほど放置してから挽きはじめます。
挽き割って厚さが(挽き割りの限度と思われる)6センチに近くなったらまた接着してブロックにして挽き割る、こうすることによって無駄のない挽き割りができるのです。挽き割りの際のもう一つの工夫は、先ほど述べた手押しガンナによる直角出しをいい加減にしないということです。
下が手押しカンナによる直角出しの写真です。
まず片面の平面を出し、続いて右の垂直の壁に沿って左隣りの面の平面を出していきます。これで隣り合うふたつの面の直角が出ます。
接着した時には必ず直角出しを行い、直角出しができたら、左右と上下は厚みが均一になるように自動カンナの作業を加えます。この一連の作業を怠ると安定感に狂いが生じるばかりか、歩留まりが悪くなって不経済ともなります。
つまり、直角出しと厚みの均一が不十分であれば、丸ノコの刃が材料に正確に入らずに挽き割り面の凹凸が激しくなって最終的に平面にするために削る量が多くなるという訳です。
(木工にくわしくない方は、直角出しをイメージするのは難しいかもしれない)。

挽き割りの際のさらにもう一つの工夫は、丸ノコの刃を材料に対してどの程度の深さで入れるか、何回に分けて挽くかということです。
例えば幅が130ミリの板を挽くのには、(材料を裏返すので)刃は深さ68ミリから70ミリにセットすれば良いわけですが、こんなに刃を出して一度に切断しようとすれば(ましてやタテ挽きはヨコ挽きに比べ負荷が掛かります。筆者は専用のタテ挽き用刃に付け替えます)機械への負担が大き過ぎて故障の原因になりますし、何よりそれは危険が増すことを意味します。
したがって筆者は、このような板の場合はまず25ミリ、ついで25ミリ、最後に18ミリから20ミリにして3度に分けて挽きの深さを増やしていきます。
写真は2回目の刃出しによる挽き、深さ50ミリまで。いずれにしても丸ノコ盤で薄い板に挽くという作業は正確さが要求され、それは常に危険と隣り合わせです。そのために思いつく工夫を確実にやって、さらに神経を集中させての作業ということになります。
挽き割りは、ドアリラの製作中一番疲れる工程かもしれない。で、入手できたほとんどのサクラ材を使って、ようやく薄い板の挽き割りを終えようとしています。これを使って、ドアリラを新たに作ります。

下が、挽き割ってカンナをかけたサクラ材の木肌、木目。
1枚目と2枚目に現れている白い部分は辺材、3枚目も含め色味がついているのは芯材です。サクラはどれもやさしい肌をしています。
当然ですが、部分部分で表情に違いがあります。

先ほど述べたように、今回の挽き割りは新たにE-02 sakura がほしいという要望からの出発でしたが、今ならリクエストが可能です。
それは、当工房が展開しているドアリラのラインナップline-upは現在19種類、例えばB-02 tipeeの型をサクラ材で、例えばC-04 mantelをサクラ材でなど、どの型でもサクラ材で作ることは今なら可能だということです。

下は、製品ラインナップ。くわしくは、次のpdf資料(line-up)で。
なお、topのworksでは、ラインナップの他ひとつひとつ、種類についての素材を含んだ仕様をくわしく紹介しています。
なおこの製品ラインナップには、先に写真を掲載したD-05 horn leftは含まれていません。

 

pdf資料line-up

ひとつひとつ別のものを作るのは合理的とは言えませんが、表面の板ができた現在にあっては、それはできないことではありません。
サクラ材によるドアリラを希望される方は、この機会を是非ご利用ください。
ただしこのリクエストは4月いっぱいで終了とします、予めご了承ください。

せっかくのサクラ材の挽き割り、リクエストとは別に筆者がこれから作ろうと考えているのは、A-02 pick、D-05 horn left、そしてE-02 sakuraの3種です。いずれも5点程度を予定しています。
下は、A-02 pick。
D-05 horn left、E-02 sakuraについては、先頭の写真を参照してください。

値段設定については、group Aとgroup Bの型については15,500円(4弦4玉は変わらず。左のサポートピンはスチールではなく真鍮を予定)。
group Cについてはgroup Dの値段(18,400円)。group Dとgroup Eについてはそのままの値段(18,400円、20,600円)とします。

さて、3月に入って今日まで3度ほどの春先の嵐、吹雪がやってきました。5センチほどの積雪の日も。
でも、降っては好天によって消え、雪はさらに嵩を減らしていくばかり。また吹雪がきて雪が積もっても、消えるのは早いものです。
こういう好天と荒天のくりかえしをしつつ、時は春へと向かっていることを実感します。これが、三寒四温なのですね。

下は、3月24日の吹雪。

でも、家の玄関口には今、もらってきた枝のオオヤマザクラ(大山桜)が満開でして。
暖かい部屋でしばらくおいておいたのです。枝ぶりは老木の、独特の味です。

26日、外に出てみたら、咲いていました、我が家のフクジュソウ(福寿草)が。雪の間から。
そしてフキノトウ(蕗の薹)も。あたたかな春は、もうすぐ、そこまで!