製作の時間

軽トラに住まいを 3 基礎づくり

シリーズ「軽トラに住まいを」第1回は「整地」、第2回は「土間コン打ち」でした。そして第3回の今回は「基礎づくり」を記すことにします。


土間コンの完成が6月30日のこと、生コンの流し入れから硬化のために2日を置いています。
土間コンの完成はひとの助け(しかも私淑するシショウにお願いし)も得たし、業者に頼んで生コンを流し入れてもらったし、なんかすごく大きなことを為したなという感慨を持ったものです。

それは、はじめて手作りした畑で米沢地方特産の“薄皮丸茄子”がひとつ生った記念すべき時でもありました(笑い)。
薄皮丸茄子については語ることがたくさんあり、また別の稿で。

土間コンは同時に“べた基礎”の役割も担います。
べた基礎というのは(これから筆者が語ろうとする)“布基礎”と対の用語で、立ち上げていくものが布基礎なら底面全体を鉄筋コンクリートでおおうことを言います。
板状で面積が大きく、上物(うわもの)の加重を分散させますので耐震的にも有効で、第一、湿気を上に上げない効果は抜群です。
軽トラの車庫を土間コンでと考えたのは、この湿気対策がそもそもの理由でしたし。

一般住宅では布基礎のみが多いと思うのですが、べた基礎と布基礎を併用すると基礎としては盤石です。でもそれだけコストが上乗せされるということであまり普及していないのも事実のようで。

我が主屋も実は布基礎のみです。
まあ、主屋の建築は30年近くも昔のこと、当時の筆者自身に基礎とその効果についての知識があろうはずもなく、単に金銭を考えて提案を軽く退けたのだけれども、今にしてみれば、多少の上乗せでもしておけばよかったという反省はあります。あとのまつりですが。

下の写真で土間コンが完成しても杭と型枠を残しているのは、この杭を使って基礎(布基礎。以下、単に“基礎”とする場合多し)のレベルを取るためです。

平面ができ、まずしなければならないのが“矩手(かねて/かなて/かなで)出し”です。
“カナデ”は建築用語で直角のことをいいます。
“直角”と“水平”と“垂直”こそ建築の命、決しておろそかにしてはいけない三大要素というものです。

このカナデ出しにはシショウのタカシさんに少々の手伝いを得ています。
基本、三六判(横3尺=約91センチ、縦6尺=約182センチ)のベニヤを置いてその直線の延長を枠に記します。また“三平方の定理”(なつかしいなあ!…笑い)を使って、3辺をそれぞれ3と4と5の比にすれば、斜辺と対角の辺は(3と4の辺は)直角になります。
筆者の場合はベニヤの延長からカナデを取って、最終、両対角線の長さを測って同じ寸法であることを確かめました。
そしてようやく、2間(けん)×2間=364×364センチの正方形が出てきたのです。
このカナデ出しは机上の紙なら簡単でも、大きな面積では意外と手こずると思います。

そしたら何と何と、入り口左(東側)の基礎(基本ブロック10センチ)を置くところが約4センチ足らないではありませんか。
ガーン、です(笑い)。ガビーン、です(笑い)。ヤバイです(笑い)。♪ティラリー、ティリリーリーー(バッハ「トッカータとフーガ」冒頭)(笑い)。

土間コン(べた基礎)としてしっかり計算し計測してギリギリセーフの面積の地面の掘り下げをしたつもりでしたが、その慎重さがいけなかったのです。もう少しの余裕と遊びが必要でした。
今さら悔いても仕方のないこと、さらに掘って土間コンの面積を拡げねばなりません。
素人って、これだからイヤですね(笑い)。嗚呼、情けなカア!(笑い)

持ち合わせ(もらいもの)のØ8ミリの鉄棒を40センチほどに切り、不要な角材に穴をあけたところに鉄棒を挿し入れて力を加えれば、ペグのできあがりです。
このペグで、砂利を敷いた拡張部分に渡す異形鉄筋を押さえつけます。
流すのは作業上、コンクリートではなくモルタル、場所が狭すぎてメッシュを入れること適わず、せめて鉄筋をと考え、その固定のためのペグを作ったというわけです。

そして、(6月)30日に、業者に出向いてモルタル用の砂(砕砂)を買ってきました。0.25立米(㎥)で下の軽トラの荷台のくらい。
ショベルカーのショベル(シャベル)いっぱいが1立米なのだそうで、その4分の1をざっくりなんていくら慣れたオペレーターでも至難の業だと思うけど(荷台の分量はありがたいことに、すごく多い感じ)、この量で何と、1,210円でした。安ッ!(笑い)。
砂や砂利の建築資材というのは、(取りに行けばだけど)こんなに安いのです。

先に、「(拡張部分に)流すのは作業上、コンクリートではなくモルタル」としたけど、コンクリートとモルタルは似ているようでちがいます。
“コンクリート”はセメント(1)と砂(2)と砂利(3)と水で作るもの、対して“モルタル”はセメント(1)と砂(3)と水で作るものです。モルタルには砂利が入らないのです。
モルタルはペースト状で施工性がよく、仕上げ材やレンガ積みや目地材として使われたりします。
コンクリートとモルタルではモルタルの方が高価です。
筆者のような、“ネコ車”(手押し一輪車)で練る場合は、モルタルの方が絶対に楽に作れる、ということでのモルタルです。

モルタルを作って、隙間に盛りました。

下が、基礎となる基本ブロック(10センチ)を置く場所。わずか3センチ、4センチですが足らなかったことが分かります。

モルタルも固まって拡張がなされ、1段目のブロックをモルタルを敷いた上に載せたところ。

水糸で杭と杭のレベル(水準)を結んで。2段目が立ち上がりました。

本当なら、ブロックで基礎を作る場合は、土間コン(べた基礎)の中から鉄筋が立ち上がるべきなのですが、筆者には土間コンを打つ前に鉄筋を入れておく技術もイメージもありません。よってこういう流れになってしまいますが、これは致し方ないことです。

そこでいくらかでも土間コンと立ち上げの基礎をより一体的により頑丈にするために、2段のブロックの穴にできうる限りの鉄筋を入れることにしました。そこで大活躍するのが“鉄筋カッター”です。
今までなら鉄筋をクランプで押さえて、ディスクグラインダーで1本1本切っていたものですが、この道具があれば瞬時、ちょとした力でØ10ミリの鉄筋がポッキンポッキンとおもしろいように切れていきます。道具って、素晴らしいです。
なお、この鉄筋カッターはタカシさんにお借りしたものです。本業の大工は、当然のことながらいろいろと持っているものです。

そうして12本のアンカーボルト(基礎と土台をつなぐボルト)とともに、アンカーボルトが入らなかったブロックの穴すべてに鉄筋を挿し入れたのでした。
当然のこと穴にはモルタルを詰めるのですが、その際に注意すべきはモルタルを木の棒や鉄筋などでていねいにつついて中に隙間をつくらずにぎゅうぎゅう詰めにすることです。
基本ブロックに鉄筋がすべて入ったのが7月8日のことでした。ここでひとつの区切りとなりました。

ここでちょっとコーヒーブレイク。

わが家の花壇(と言っても野生の植物を移植したものが多い)にはクサレダマやサボンソウが咲きはじめていました。
クサレダマは“腐れ玉”にあらず(笑い)、漢字表記にすれば“草連玉”です。レダマという植物に似ているところからの命名です。サクラソウ科オカトラノオ属の多年草。
これは、近くの道端にあったものを移植したものです。すごい繁殖力で毎年間引く必要があります。

下の薄い桜色の花がサボンソウ(石鹸草/ナデシコ科サボンソウ属)。
全草にサポニンを含んで、ヨーロッパではこの草が洗濯の洗剤代わりに使われたとのこと。日本で言えば、サイカチ(皀莢)の実がこれに当たりますね。
この植物は明治期に渡来したものだそうで、これは郊外の最上川河川敷から数株移植したものです。

鼻歌交じりに、畑に水やりの相棒のヨーコさん。

畑はつくったはいいもののどうやって管理していこうと不安だったのは確か。
イノシシやアナグマの掘り起こしを心配したのだけれど、まだ一度も被害に遭わないのは深い(!)祈りが通じているから?(笑い)。
実は近くで畑を作っている家は電気柵を設置しており、その予防効果がここにも及んでいるのかもしれず。
このまま、来ないでほしいな。お願いです、イノシシ君、アナグマ君!(笑い)。シッシ、ですよ(笑い)。

トウガラシもミニトマトも、ササギにピーマン、カボチャやハックルベリーもバジルやパセリも順調な生育を見せています。
毎日が楽しみ。

と、現場にやってきたのはエゾゼミ(蝦夷蝉/セミ科エゾゼミ属)君でした。
頭に「山」の字を入れているのですぐ分かります。

どうしたのって聞いたら、「木の上で鳴いているのに、ちょっと飽きた!」とのこと。
やっぱりね。互いに休憩しながらやろうね。それじゃあ!(笑い)。
ところでエゾゼミの「ギーーーィ…」という鳴き声は6月の半ばには聴いていたけど、それに入り混じって「カナカナカナ…」というヒグラシ(日暮/セミ科ヒグラシ属)の初鳴きはこの(7月)4日のことでした。そして、梅雨明けがもう目前という14日15日頃の夕暮れ時の大合唱といったらなかったのです。
ヒグラシは晩夏のイメージがあるかもしれないけど、そうでもないです。

そして、主屋とともに、車庫(ジムニー用)とヒュッテ(兼工房)の屋根にも雪割りが完成しました。
これで雪は従来よりずいぶんと早くに落下して雪下ろしの心配もなくなります。今後の冬はだいぶ楽になることでしょう。

さて、柱の落としどころ12箇所に基本ブロックを立ち上げ、中ほどの南北の通りにはすべてブロックを渡すことにしました。
基礎の材料としては基本ブロックの他には、切り石(すべていただきものの凝灰岩)と(掘り出し)レンガ、それに一部枕木ブロックをと考えていたのですが、中央部は目につくところではないので基本ブロックをつなげたのです。石とレンガの節約からです。

石は、ヒュッテの増築(2020年7月に完成)時にやはり基礎材として使い、さらには畑のヘリ(2020年10月末に完成)の縁どり材に使ったものの余りものです。
それをディスクグラインダーの切断砥石で切り、軽トラ車庫の基礎用に加工しています。
加工は水を掛けかけ進めるのですが、その粉塵たるやすさまじく、写真のように完全防備です。

切断砥石を石の周囲に回し、切れ目にレンガ用チゼル(タガネ)を挿してハンマーで叩けばだいたい思い通りに割れてくれます。石はとても素直です。

それからずいぶんとほったらかしにしていたぶっかけレンガをていねいにタワシがけします。

少々難儀したのが、ここに薪小屋があった時の基礎にしていた枕木ブロック(穴を深く掘りそこにコンクリートブロックふたつを埋め込み、その上に枕木ブロックを置いていた)を布基礎のパーツとするために(基礎幅に合わせ)半分に挽き割る作業でした。
最初はチェンソー遣いで何とかなるのではと思っていたのですが、ヨコ挽きならともかくもタテ挽きとなるととんでもない時間と労力を要することが分かってやめにしました。
結局は丸ノコと丸ノコ盤を使用し、少しずつ刃の深さを出して切り進めました。とにかく、枕木は堅く加工がしづらいのです。
加工中、丸ノコの刃先の超硬チップがやられはしないか冷や冷やモノでした。
安全を確保して作業を進めたため、エライ時間がかかりました。慎重な作業が続くとどっと疲れます。

筆者はいままで枕木というのはクリ材が使われているとばかり思っていたのですが、調べてみると樹種は様々、今回扱ったものではマツ材もあったけどこれらは腐食が進んでいて使いものになりませんでした。多くは南米とか南洋地域から伐り出したと思われるきわめて堅牢な材のようです。

下は、基礎の幅(10センチ)に挽き割った枕木ブロック。

石、レンガ、枕木ブロックとすべてのパーツをそろえたところ。数は十分です。
パーツつくりには相当な時間を費やしました。

基礎の外周をパーツを組み合わせて、モルタルで接着していく準備が整ったところです。 

下はモルタルを練っているところ。セメントと砂が混じりあって均一な色になるまで混ぜ合わせます(空練り)。それから少しずつ水を入れて、十分に練り上げます。
何べんやってもこの水の入れ方は注意を要します。早くモルタルの粘度を決めたくなり、つい気を抜くと入れすぎということになりかねないのです。
モルタルが緩すぎると、ふさがれた隙間に流し込むくらいならいいとしても、目地としての厚みを出しつつの物と物との接着には使いものにならないのです。

照りつける炎天下での作業ではひともたまらないですが、モルタルにとっても酷なものです。乾いたところにモルタルの接着は向かないのです。
よって、作業に入る前に、接着しようとする箇所に十分な水まきを行う必要があります。

そうして段取りを整えて、いざできたモルタルをコテ板に載せ、そこから一定量をレンガゴテですくって、写真のように2列に置いていきます。

そうして慎重にパーツを載せます。載せてはひとつひとつのタテとヨコの水平を水準器で取っていきます。

モルタルをいったん作った場合は、もうあとは時間との勝負となります。
どんなに疲れていようが、腰が痛かろうが、炎天だろうがモルタルは時間の経過とともに徐々に硬化していきます。モルタルは決して待っていてはくれないのです。
こんな時に不意の客があった場合は、申し訳ないけど、お断りするしかありません。
宅配業者にも「そのへんに置いてもらっていいですかね」とお願いするしかありません。
それぐらい繊細に、素早く合理的に動き回らなければならないのです。当然、この作業の時にはラジオもスイッチオフです。
このむずかしさというのは、モルタルを本格的に扱ったひとでなければ理解してもらえないのではないでしょうか。

そうしてようやく連続した布基礎が出来上がってきました。
こんな風にモルタルで連続してしっかり固めると独立したブロックだけの基礎の強度とは雲泥の差となります。
下は、天端(てんば)を均し終え、アンカーボルトの位置にネコ土台(ネコ板)を載せて完成を見たところです。
ようやくここまでたどり着きました。素直に、うれしいです。

で、ここまできて、少々遊び心が出て、(土間コンづくりの最初には見送った)水盛缶によるレベル出しをやってみようと思いました。
まっすぐな角材と水準器によって取ったものと水盛缶によって取るレベルと、どの程度のちがいが出るのかを確かめてみたく思ったのです。
さらに、ここからは土台が回され上物がたちあがっていくわけで、修正がきくとするならネコ土台の厚さを調整すればよいとも考えたのです。
でもこういう、順序のあとさきを無視するというやり方はプロからは嫌われるでしょうね。レベル出しの時にこそ考えられる方法(この水盛缶の方法も含めて)で試す必要があったのですから。

ホームセンターから透明なホースを5メートルほど買ってきて(120円/メートル)、中央に置いたバケツに(アンカーボルトの中間ぐらいの高さまで)水を入れて、片方におもりをつけて沈めて、片方から水を吸いました。
その吸った方のホース口をそれぞれのアンカーボルトに近づけて印をつけていきました。
むずかしいことなんて、何にもなかった。これなら、コンパスのようにして各杭に水準器で印をつけていたのは何だったのかと笑ってしまうばかりでした。

で、結果ですが、12箇所のレベルで最大の誤差は11ミリでした。
でも、2間2間(8畳間)の建坪にしてこの11ミリという数字は決して小さくないものですね(笑い)。反省です。

当然ながら、最大誤差11ミリのものを含め誤差のあるものは1ミリとてそのままにせずに、ネコ土台を削ってすべての調整を終えたところです。

signalで「藤十郎まで」をアップしたけど、この山行は石とレンガと枕木ブロックのパーツが完成し、あとは積むだけというところまで段どったあとでした。
日々、働くのはいい。休暇は明日へのエネルギーです。こういう労働と休暇のバランスは今後も大切にしていきたいと思っています。

それにしても暑いね。
小さなボトル容器に詰め替えて凍らせたキリン「ソルティライチ」がおいしいです(笑い)。
何気にのぞいた「ヨークベニマル春日店」というところで1,500ミリリットルのものが何と130円ほどででていてビックリ。思わず6本を買ってきました(笑い)。

以下、「軽トラに住まいを 4 木取り」(仮題)につづく。

そいじゃ、バイバイ。

 

※本文に割り込んでいる写真はサムネイル判で表示されています。これは本来のタテヨコの比から左右または上下が切られている状態です。写真はクリックすると拡大し、本来の比の画像が得られます。