今回のsignalは特別篇、「記念誌『米澤ポランの廣場Ⅸ 最終号』」と題した、記念冊子のまるごと一冊のご案内です。
筆者が代表を務めてきた宮澤賢治の読書会・米澤ポランの廣場は月に一度の集まりをもって賢治の作品を読んできました。設立は1990年6月で、この10月にその歩みに終止符を打ちました。33年と4か月、ちょうど400場(回)という節目でした。
出会いがあれば別れはついてくるもの、はじまりがあれば終わりは必ずやってくるもの、別れや終わりに際してどんなふうにそれを迎えればよいのかを考えてきました。逡巡ののち、それは現在の廣場につどうみんながいっしょの着地点がいいと思ったのです。先細りからの自然消滅などではなく、あくまでもスマートでありたいと。
そういうことで2年前(2021年)の正月の例会で廣場の解散(散開)の提案をして了承してもらい、それからというもの400という数字が大きな目標となってきていました。
400という数字は廣場の終了と同時に、その節目に思いのたけを込めた記念誌をつくるということでした。
記念誌つくりは1年計画、苦しかったであろうそれぞれの原稿の執筆(笑い)、原稿が集まってからはこちらは編集の日々、編集が済んでからは膨大な量の印刷を行い(地元の万世コミュニティーセンターの職員のお手を煩わせました)、会員による丁合作業をしました(1枚1枚をていねいに重ねて100枚超、それをまた1冊分ずつ頁を順繰りして間違いがないか確かめて…、たいへんな労力でした)。
いずれも金銭に余裕のない我々の切りつめからの工夫でした。
そして表紙や口絵の印刷と製本はなじみの業者にお願いしました。その業者・あづまプリントさんにはていねいで迅速な仕事の上にずいぶんと勉強してもらいました。ありがたかったです。
そうして、記念誌がようやくできてきました。
記念誌には宮澤賢治作品への「小論(評論)」を主として収録しました。これが私たちのサークルの肝だからです。
賢治にただよう空気や上澄みをさらっと掬ったって何にもならない、それは読んだ証しにはならない。読んだことの蓄積は作品論にこそ現れるものです。よって、これがそれぞれの賢治に対する現在地です。
さらに、今までの歩みをふりかえってのそれぞれの思いを集めた「つどいの廣場」や、思いもしなかった宮沢賢治学会イーハトーブセンターからの功労賞の授与関連のこと、50場(回)分(351~400場)の廣場通信、第1場(回)からの例会の全記録、そして読んできた作品を表にした全作品表も載せました。
そうすると冊子は、202ページにおよぶ分厚いものとなりました。
それで、さっそくにも図書館や宮澤賢治関連の施設や各地の賢治サークルなどに送付したら、個人に差し上げるべく部数がないのに困ってしまいました。見通しが甘かったです。
それで、筆者個人のHP上ではありますが、ここに記念誌のpdf化した全篇を公にするものです。
まずは、「あとがき」をお読みいただければと思います。
「あとがき」は記念誌の全体的な構成が分かると同時に、それぞれの読みのガイドをしてくれると思います。あとは、興味の向きにしたがってください。
老婆心ながら、「小論(評論)」については、その作品を読んだことがあるまたはおおよその内容が分かるならいいでしょうが、分からないまたは読んだことがない場合は、まずは原作をお読みになってからのご一読をおすすめします。でないと、文字を追うだけでは苦しくてしょうがないと思いますし。そしてそれは賢治作品にふれるよい機会かもしれません。
この記念誌にはより多くの人に訪ねていただいて、宮澤賢治という稀有な存在と作品に興味を持っていただければとてもうれしいです。
賢治や賢治作品に興味のある方には、是非この場所をご紹介いただければと思います。
米澤ポランの廣場Ⅸ 最終号 もくじ
(集會案内) 宮澤賢治 …003
米澤ポランの廣場点景2023.7.28 …005
小論
『さるのこしかけ』と異界 田村芳子 …011
『ひかりの素足』~賢治と信仰~ 本間洋子 …014
フランドン農学校の豚 ―死を意識した時 吉田悦子 …019
『黄いろのトマト』を読んで 野呂富貴子 …025
『雁の童子』、その背景を考える 高岩典子 …030
『黒ぶだう』の中のイーハトーブ 須長裕子 …033
『山男の四月』と賢治の森 中村幸男 …038
紫紺染と山男と ― 『紫紺染について』 神波聡子 …041
『鹿踊りのはじまり』にみる「ほんたうの精神」 山内松吾 …045
『龍と詩人』を読む ― 自然の言葉に耳を澄ます 山尾春美 …054
『虔十公園林』の失敗 本間哲朗 …059
つどいの廣場 …087
合同句集 …097
資料
・新聞記事 …113
・宮沢賢治学会イーハトーブセンター功労賞発表 …116
・米澤ポランの廣場通信351~401 …118
・米澤ポランの廣場、その全道程 …171
・米澤ポランの廣場、全作品表 …188
あとがき …194
それでは、どうぞご覧あれ。
記念誌『米澤ポランの廣場Ⅸ 最終号』
https://doorlira.com/download/kinenshi9.pdf