森の小径

フレデリックと紅葉と

本日は(2023年の)11月6日です。
今年もまた紅葉の季節がめぐってきました。そしてめぐりはもうすぐ雪を連れてくる、そんなところまで来ました。
我がルーザの森の紅葉のピークは毎年11月3日、これはほぼ変わることはありません。この日を過ぎると落葉がはじまり、日を追いごとに加速度的に舞い散るようになります。
この、紅葉から落葉するまでの時間、極彩色の彩りとそこから徐々に色味があせて飴色に変わってゆく時間が好きです。それは生命の営みの、ごく自然な移ろいです。

今回のsignalは紅葉をテーマとしてつづろうと思います。題して「フレデリックと紅葉と」。
フレデリックとは絵本の中の野ねずみクンの名前、本文の途中に登場してもらおうと思います。

下は、家からすぐ近くの、現在の笊籬橋(ざるばし)からの眺め、今がいちばんうつくしいかもしれない。
黄いろはヤマモミジでしょうか。

谷にかかる紅はウリハダカエデ。
笊籬溪(ざるだに)には清冽な水が流れています。

今回の紅葉の散策は(山形県)県南の置賜(おきたま)地方の東部広域農道(通称ブドウマツタケライン)の、北は高畠町の時沢を起点として筆者の住む米沢市梓山(ずさやま)の国道13号までを南下した、約25キロを走ってのものです。

時沢地区は県内でも有数のブドウの産地、急な山肌までも利用してブドウ棚が張りめぐらされています。

ブドウ棚の、ブドウの葉の紅葉・黄葉。 

赤もあれば黄いろもあって。
ブドウの種類によるものだろうけど、ブドウの葉の色の変幻のうつくしさ。

この臙脂(えんじ)いろの葉の中には黒い実が見えています。

ブドウつながりで、ヤマブドウ(山葡萄/ブドウ科ブドウ属)のうつくしい紅葉。 

ヤマブドウの実。
ひとつ口に入れたけど、ちょうどよく熟していておいしかったです。量があれば、ジャムとか果実酒にするのですがねえ、3つ、4つではねえ(笑い)。
当然にして、これはクマの好物。ヤマブドウの実は液果(漿果/しょうか)の中でも特に好きなのでは。
クマはそれぞれの実の旬を知っていて、熟さぬうちに食べるというのはあまりないのだそうで。

筆者が紅葉に目をとめるようになったのは50代の半ばあたりからだと思います。それまでは青葉若葉のまさに生命の匂いのする清新な色にばかりこころ奪われていたものです。それと対照的な、やがて死を意味するような枯れ色や無彩色に至る過程の紅葉は生理的に避けていたのかもしれず。
でもいつかの、JR東日本の車内誌「トランヴェール」でだったか、作家の立松和平(1947-2010)が「紅葉は死に装束」とつづっていてハッとしたのを覚えています。死に装束は白ではない…、死に至る者はこのような極彩色の衣を身につける…、死の直前まで生命は燃え上がる…、このイメージは強烈でした。
それからです、紅葉はうつくしいと思うようになったのは。紅葉に見入るようになったのは。

マルバアオダモ(丸葉青梻/モクセイ科トネリコ属)の紅葉。
この木は野球のバットやテニスのラケット、それから競技用スキー板の材料にもなるのだとか。

ツタ(蔦/ブドウ科ツタ属)の赤。
ツタは家屋や建物に絡みついているイメージがあるけれど、これは山中の自生種、道路開削の法面(のりめん)を這っていました。 

ヤマウルシ(山漆/ウルシ科ウルシ属)の幼木の紅葉。
ヤマウルシの紅葉はしぼりだしたままの絵の具の赤のようで本当にうつくしいです。
幼木の葉には鋸歯(きょし)=ギザギザがありますが、成長と共になくなっていきます。

ヌルデ(白膠木/ウルシ科ヌルデ属)の紅葉。
ヌルデも実にあざやかに色変わりします。
ヌルデはウルシにそっくりだけど、葉軸には翼(よく)があるので区別できます。
白くなる種子は、うつくしい声で啼きかわす鳥のイカルが好んで食べるのだとか。

キバナイカリソウ(黄花錨草/メギ科イカリソウ属)の紅葉。
筆者のまわりにあるキバナイカリソウの葉はけっこう遅くまで緑いろを保っているのですが、こうして赤くなっているのを目にするのははじめてです。

紅葉を代表するひとつ、ガマズミ(莢蒾/ガマズミ科ガマズミ属)。
赤い葉の中に黒いむらさきが入ったり、みどりが残っていたりのマーブルもきれいでして。

ガマズミの赤い実。
野鳥はもちろんのこと、今年は何かと話題のクマの好物でもあります。
クマの歯は食物をすり潰すようにはできていないのだそうで、したがってこのような小さな実はそのままクマの身体を通過して消化され、糞として出されたタネはそこから発芽していくのだとか。
クマは有力な種子の散布者、運搬者なのです。
ガマズミの実は口に入れると少しすっぱいです。これで果実酒をつくると野性味あふれるおいしい酒になります。

クマヤナギ(熊柳/クロウメモドキ科クマヤナギ属)の黄葉。
蔓性の枝は粘り気があり強靭なことから雪上を歩くためのかんじき(輪かん)にも利用されてきたのだとか。
実は黒熟すれば、少しねっとりしていますが甘くておいしいです。
これもクマの好物。

クマヤナギの近縁の、ホナガクマヤナギ(穂長熊柳/クロウメモドキ科クマヤナギ属)。
なぜ名前に“クマ”がはいるのかは諸説あるようですが、熊という漢字が使われてはいても、クマが好きな、クマが棲んでいるほどに山奥にあるというのではなさそうです。熊は当て字ではないでしょうか。
米のことを古語でクマというのだそうで、これには納得です。黒熟する実は(それほど小さくはないですが)米粒そっくり、黒米、赤米という風情です。 

マルバマンサク(丸葉万作/マンサク科マンサク属)の黄葉。目が覚めるほどに真っ赤になる個体もあります。
単にマンサクではなくマルバとつくのは、マンサクの雪国型変種。
よくみると葉は左右非対称です。 

ヤマハギ(山萩/マメ科ハギ属)の黄葉。
ハギで最もなじみのあるのがこのヤマハギです。
筆者の母親が亡くなったのが8月の末だったので、その頃に咲いていたヤマハギにちなんで、彼女の忌日を「山萩忌」としたものです。それで、墓の一角にもこのヤマハギを移植しています。
ちなみに父親は茅屋根職人だったので、「茅忌」としています。
いずれも筆者の、勝手な情緒的な思い込みです(笑い)。

イケマ(生馬/キョウチクトウ科イケマ属)の黄葉。
イケマとは初めての出会いです。
イケマは毒草ですが渡りの蝶として知られるアサギマダラの食草でもあります。
アサギマダラはこの葉の裏に卵を産みつけ、卵からかえった幼虫はこの葉を食べて育ちます。幼虫は毒を身体に蓄積して外敵から我が身を守るのだとか。
自然の力というものはすごいものです。 

クワ(桑/クワ科クワ属)の黄葉。
山野に自生のクワ(ヤマグワ?)は多いのだけれど、これは道路沿いにあって、かつての桑畑のものが大きくなったものと思われます。養蚕がさかんだったのでしょう、大きな木が10本ほども一緒に立ち並んでいます。

葉がクワによく似ていますが、これはヒメコウゾ(姫楮/クワ科コウゾ属)。
紙幣にも用いられる和紙の原料のコウゾ(楮)は、本種とカジノキ(梶木)の雑種から誕生したということです。

山肌は紅葉真っ盛り。
ブナ帯と称される東北の、この落葉広葉樹林帯に住むことのできる幸いを思います。

途中、もはや水不足で干上がりそうな蛭沢湖(びるざわこ/灌漑用人口湖)の湖底が見えていました。ここもパステルのようにうつくしく色づいて。
手前のみどりの樹木はヤナギ(柳)、中ほどのすみれ色はチガヤ(千萱、茅)? 遠くの萱草(かやくさ)色はススキ(芒)でしょうか、それともヌマガヤ(沼茅)?

広域農道の途中にはかつての石切り場(瓜割石庭公園)があって立ち寄ってみました。
石切り場はいつ見てもすごい迫力、ここは文句なしの絶景スポットです。
この石切り場は最近頓(とみ)にメディアで取り上げられているらしく、筆者が寄ったときも関東ナンバーのクルマが2台、3台と。

広域農道25キロのうちの3分の2はこんな紅葉の道です。この道が好きです。

途中に蕎麦の畑もあって、ちょうど収穫前という感じでした。このふじ色もうつくしいものです。

ノイバラ(野茨/バラ科バラ属) の赤い実。
この前ちょっと遠出して相棒と喜多方にラーメンを食べに行ってきたのだけれど、帰りに寄った道の駅裏磐梯にはこのノイバラのすこしばかりの枝が何と650円で売られていてびっくり。
筆者はその20~30倍もの量を(30倍として19,500円分!…笑い)、冬分のリビングの彩りと果実酒の材料として剪定ばさみでチョキチョキしてもらってきました。
この実は今まではなかなか集められなかったのですが、この場所には一カ所に群生していて、これで今年のノイバラ酒つくりもバッチリです。
もうすでに同じような考えのひともいたようでして(笑い)、数本の切り跡もありました。

トチノキ(橡木/ムクロジ科トチノキ属)の黄葉。

オクチョウジザクラ(奥丁子桜/バラ科サクラ属)の紅葉。
葉でサクラの種(しゅ)を特定していくのはむずかしいです。それでもあえて挑戦するなら、オクチョウジザクラの葉の特徴は卵形の葉のもっとも膨らんだ部分が中心よりも先側に近いのだそうで。

カスミザクラ(霞桜/バラ科サクラ属)の淡い紅葉。まるでセザンヌみたい。
カスミザクラは木肌の横に長い皮目(ひもく)が特徴的です。

ウワミズザクラ(上溝桜/バラ科サクラ属またはウワミズザクラ属)の淡い紅葉。この色の淡さが何ともいえず奥ゆかしいです。
サクラとはいってもこちらは瓶ブラシのような白い花が咲きます。
ウワミズザクラはサクラの仲間にしては実つきがすこぶるよく、当然クマの大好物です。
我が家のすぐ近くにウワミズザクラの木が何本もあって、一昨年だったか、この木にクマが登って実をむしゃむしゃ食べていたとは隣家のひとの話です。

オオバクロモジ(大葉黒文字/クスノキ科クロモジ属)の黄葉。混じりけのないうつくしいレモンイエロー。
和菓子に添えられる高級な爪楊枝はこの木が材料です。

ヤマナラシ(山鳴/ヤナギ科ヤマナラシ属)の黄葉。
ヤマナラシの葉はポプラ(セイヨウハコヤナギ/西洋箱柳)にそっくりです。
ヤマナラシの葉柄の断面は円ではなくタテに長い楕円形をしています。ということは、風がやってくれば葉自体が横に左右に大きく揺れ、蝋質の硬い葉と葉が擦れ合って音が鳴る…、これが名前の由来です。

ヤマナラシの皮目も特徴的で、ソロバン玉のような模様がたくさんつきます。

アオハダ(青膚/モチノキ科モチノキ属)の黄葉。
アオハダはすっくと株立ちしますので遠くからでもそれと分かります。
若葉が山菜やお茶にもできるアオハダの葉が今は黄色に染まっています。
これは雄株なので実がついていませんが、雌株にはたくさんの赤い実がつき、葉をすっかり落とすとまるで赤い木になります。

オノオレカンバ(斧折樺/カバノキ科カバノキ属)の黄葉。
晩秋のキノコを求めて山に入ることがあってオノオレカンバの葉を落とした姿は何度か見ていましたが、黄葉ははじめてのことです。うつくしいです。

この木の特徴は何といっても木肌、皮がところどころでめくれあがっています。
材は年に0.2ミリしか太くならず、斧が折れると称されるほどに硬質、水に沈むほどに比重が大きく、ゆえに貴重な銘木です。さまざまな山の樹木が持ち込まれる原木市場といえどオノオレカンバを見るのはむずかしいでしょう。

階層をつくる独特の樹形のミズキ(水木/ミズキ科ミズキ属)も淡い黄いろになっていました。

ヤマボウシ(山帽子/ミズキ科ミズキ属)の紅葉・黄葉。
この葉が何のものかはすぐには分からず、図鑑をめくってようやくつきとめました。
ヤマボウシの葉脈は葉の外周をなぞるように独特にカーブするのですね。葉の形も長いのから丸いのまでずいぶんと個体差があるようです。
ヤマボウシの紅葉・黄葉もまたうつくしいです。

 

ここで、コーヒーブレイク。
ここで、フレデリック。

「フレデリック」とは「スイミー」でおなじみのレオ=レオニ(1910-99)の絵本(訳:谷川俊太郎、好学社1969)、フレデリックはその主人公の名です。

農民が去ってしまって納屋はかたむき、サイロはからっぽ、そんな近くの石垣に野ねずみが住みついていました。
野ねずみたちは冬に備えておおわらわ、トウモロコシや木の実、小麦や藁(わら)を集めていました。
ところがそんな働く野ねずみたちにあって、ひとりだけボーッとして何もせずにたたずむだけのねずみがいました。それがフレデリック。

野ねずみたちはフレデリックにききました。
「どうしてきみは働かないの?」と。
それに対してフレデリックはいうのです。
「寒くて暗い冬の日のために、おひさまのひかりを集めているんだ」と。
「色を集めているんだよ。冬は灰いろだからね」と。
けれど野ねずみたちはそんな答えにちんぷんかんぷん。

野ねずみたちは冬が来ても食べ物があって満足、でも徐々にそれも少なくなり底をついてきたときに思い出したようにフレデリックにたずねたのです。
「きみが集めたものはどうなったんだい?」。

そしてフレデリックはいうのです。
「目をつむってごらん。ほら、感じるだろう、燃えるような金色のひかり…」。
そうすると野ねずみたちのからだがあったかくなってきたのでした。
「色は?」と聞けば、青いアサガオや黄いろの麦のなかの赤いケシや野イチゴのみどりの葉っぱのことを話し出すと、みんなはこころの中にぬりえでもしたようにはっきりと色を見たのです。

フレデリックはひかりや色だけでなしに、ことばも集めていました。お話はことばについても続くけど、それは本作に実際に当たってのお楽しみということで。

そう、フレデリックとは具体的には今でいう作家、詩人、アーティスト。そして金銭には無縁かもしれないけれども他とはちがって大切な何かをさがし求めているひと、そう、目の前の価値観に流されることなくおのれのこころにしたがって思いをあたためているひと、そういうたくさんのひとの総称だと思います。
作者のレオ=レオニって、絵本作家を超えて、詩人であり思想家でもあるのがよく分かります。

で、なぜ紅葉のたよりにフレデリック?
それは決まっているじゃないですか。フレデリックにならって、もうすぐやって来る、長くて、寒くて、つらい、無彩色の冬にそなえて、たくさんの色をためこんでいるのさ、ボクも(笑い)。
紅葉狩りをするひとって、みんなこんな感じ?

散策を続けましょう。

黄いろといえば右に出るものがいないのではと思われるのがタカノツメ(鷹爪/ウコギ科タカノツメ属)。
混じりけのない淡黄(たんおう)色がとてもうつくしいです。

タカノツメを含めた以下の3つはウコギ科の植物で、いずれもおいしい山菜です。
料理法としてはおひたしがシンプルで最上、それぞれの微妙なキドさ(エグ味)が個性を感じさせてくれます。てんぷらというのはおひたしを味わったあとにするものです。

コシアブラ(漉油/ウコギ科コシアブラ属)の白化した黄葉。かすかに黄が入り混じっています。この白はとても目を引きます。
コシアブラの白い葉が枝を離れて落ちると地表面の微生物によって葉肉が分解され、やがて葉脈だけが浮かび上がるようになります。
朽ちゆく過程として、それもまたうつくしいと思います。

ハリギリ(針桐/ウコギ科ハリギリ属)の黄葉。
この木の幼木には鋭いトゲがあって、まともに刺さったらひどいケガをしてしまいます。要注意です。その鋭さとしたらタラノキ(楤木)どころではないです。
同じウコギ科でもハリギリは樹高20メートルもの高木に成長します。筆者のところにも1本の高木がそびえています。
山菜としては、ウコギ科3つの中ではハリギリが一番癖がない(キドくない)と自分では思います。ただしこれは個人的な見解で、異論はあるでしょうね。

紅葉・黄葉の華は、何といってもムクロジ科のカエデ属に尽きるのではないでしょうか。
東北のブナ帯にはカエデ属の木が多く自生し、それぞれの特徴を際立たせてうつくしさを競いあっています。

ウリハダカエデ(瓜膚楓/ムクロジ科カエデ属)の紅葉・黄葉。
ルーザの森でもごく普通に見られるなじみのカエデです。

 

ベニイタヤ(紅板屋/ムクロジ科カエデ属)の黄葉。
イタヤカエデには様々な変種がありますが、このベニイタヤはうつくしい藤黄(とうおう)色となります。藤黄は黄系伝統色の中でももっともあざやかな黄色を指します。 

イタヤカエデ(板屋楓/ムクロジ科カエデ属)の紅葉。
イタヤカエデの中で異色の葉が赤系のもの。少なくとも葉柄が赤いベニイタヤ(またはアカイタヤ)とは違うと思います。

ヤマモミジ(山紅葉/ムクロジ科カエデ属)の紅葉。
ヤマモミジは東北のブナ帯にならどこにでもあるカエデ。このみどりから赤に変わるうつくしさは何とも言えません。

真っ赤に染まったヤマモミジ。 

ミネカエデ(峰楓/ムクロジ科カエデ属)の紅葉。
ミネカエデは標高が増すにつれて増えていきます。月山ではこのミネカエデが紅葉の主役を務めていたものです。

ハウチワカエデ(羽団扇楓/ムクロジ科カエデ属)の紅葉。
ウリハダカエデとともにこれもとても身近なカエデです。
ハウチワカエデは猩猩緋(しょうじょうひ)ともいうべき、もっともあざやかな赤にもなります。猩猩は猿に似た伝説上の動物で、その血はもっとも赤いとされることから。

カラコギカエデ(唐子木楓/ムクロジ科カエデ属)の紅葉。
湿地に多く自生します。

 

そして今回はじめて目にしたメグスリノキ(目薬木/ムクロジ科カエデ属)の紅葉。
いやあ、きれいなもんです。
こういう赤をこそ唐紅(からくれない)というのだと思います。同じ意味で深紅(しんく)です。
実はこれは山形県(高畠町)県境の宮城県七ヶ宿町稲子で発見したもの。メグスリノキはこれが北限のようです。
メグスリノキは昔から樹皮を煎じて洗眼薬にしてきたとのこと。また、樹皮、枝、葉を煎じて健康茶として利用、肝臓や眼の調子を整える有用な樹木であるのを知りました。
すばらしい出会いでした。

春を代表する山菜であり大切な保存食でもあるワラビ(蕨/コバノイシカグマ科ワラビ属)は、今はこんな色に。

こちらも大切な保存食のゼンマイ(薇/ゼンマイ科ゼンマイ属)は、今はこんな色に。
筆者たちが“春”というときには、具体的にはこのゼンマイの出る頃を指しています。それだけゼンマイは春と強烈に結びついて身体に刻まれています。 

なじみのマグノリア、コブシ(辛夷)によく似たタムシバ(田虫葉/モクレン科モクレン属)の黄葉。
白化し、ほんのり淡く赤味が入っていました。

そうして、ブナ帯の主役のコナラ属。
ミズナラ(水楢/ブナ科コナラ属)の黄葉・紅葉。

 

コナラ(小楢/ブナ科コナラ属)の黄葉・紅葉。
ミズナラとコナラのちがいは葉の形にも表れますが、葉柄があるかどうかが一番分かりやすいです。葉柄があるのがコナラ、ないのがミズナラです。
ミズナラとコナラではミズナラの方が標高が高いところに分布します。ルーザの森の標高は約350メートルでコナラが主役、ミズナラは少々入り混じる程度です。これが500メートルくらいになるとミズナラが主役となっていきます。

堅果類の代表、ミズナラとコナラのどんぐりはクマの大好物です。
最近、家のすぐ近く(約10メートル先)で(笑い)、1箇所に集中した5つもの大きなクマの糞を見つけました。ドヒャー!(笑い)。
ということは毎日のようにここを起点に動いているということですね。
糞はいずれもどんぐりを食べたもののようで、色が枯れたどんぐりの色そのものでした(春は若い葉を大量に食べるためにみどり色です)。
意外に思うでしょうが、クマの糞というのはほとんど無臭です。
でもどんぐりの実つきも(さらには自生するクリの実つきも)今年はよくなく、クマの身になって考えればこれからはいきおいカキ(柿)がねらい目でしょうね。
事故に遭わないためには食用としないカキはすべてもぎ取ってしまうか、不要なら木自体を伐ってしまった方がよいと思います。

現在の、主屋のリビングから見える景色。すぐ近くの森の広場。もうすぐ、圧巻の一斉落葉がはじまります。

森の広場に行くまでの、コマユミ(小檀/ニシキギ科ニシキギ属)の黄葉・紅葉。真っ赤になる個体もあります。

ホツツジ(穂躑躅/ツツジ科ホツツジ属)の真っ赤な紅葉。
普通のホツツジはわりと淡い色をしているものですが、これは特別です。

そして、ヒュッテの窓から見えるヤマモミジ(山紅葉)。これから、黄色から赤に変わっていきそうです。

 

おお、東北のブナ帯はなんと荘厳な、神の庭であることか。
泥湯、栗駒、裏磐梯、七ヶ宿稲子、我がルーザの森、そして今回の置賜地方東端の紅葉散策、この秋の紅葉はすばらしかったです。
ここはもうすぐ葉が降りしきり、景色は飴色に枯れ色にと変わり、そして徐々に色味が抜けて無彩色になってゆきます。そうして雪がやってきます。この寂寥感もうれしく思うようになりました。

今回の記事をつづるにあたり、一部植物の同定では在野の植物研究者の神保道子さんのご協力を得ました。感謝をこめて名を記します。ありがとうございました。

それでは、本日はこのへんで。
じゃあまた、バイバイ!

 

※本文に割り込んでいる写真はサムネイル判で表示されています。これは本来のタテヨコの比から左右または上下が切られている状態です。写真はクリックすると拡大し、本来の比の画像が得られます。