森の生活

山菜三昧な日々 2

美しい季節になりました。

5月も半ばに差しかかってくると、新聞の折り込みチラシの中に、「山菜入荷」の知らせが入るようになります。
山菜は採る方もそうだけど、買ってでも食べたいと思うひとも大勢ということです。それほどに山菜は多くの人々を魅了し愛されているということでしょう。
なお、チラシは近隣の飯豊町の、道の駅いいで・めざみの里のもの。ここの山菜類は種類も量も豊富で充実しています。

と、(5月)18日のこと。
昼近く、我が家に隣接する広場に何気に(今、タカノツメはどうなっているのだろうと観察かねがね)行こうとして、切通しに黒いものがあるのに気がつきました。
何とそれは、ツキノワグマ(月輪熊)の、実に健康そうな(笑い)、若い植物ばかりを頬ばった糞ではないですか!
まあ、長い冬眠から覚め、木の芽ややわらかい葉を探してここらへんを歩き回っているのは知っているけど、こんなに近くにねえ(苦笑い)。至近距離にして、約20メートル!
その生々しさからして(笑い)、18日の午前5時前ぐらいに、いい気持ちで(笑い)用を足したのだと思います。
なぜ午前5時前かと言えば、筆者はその頃にはもう起きてウォーキングに出かけようと静寂の中に準備していて、そこでは何らの物音もしていないことを確認していたので。

意外でしょうが、この生々しいみどりがかった黒い糞は臭(にお)いというものがまったくしないのです。
これは、栄養源を無駄なくスムーズに吸収し、腸内の滞留時間が短いということからきているのでしょうか。

で、クマが我々ひとと同じエリアに棲んでいるのは構わないのだけれど、いくらなんでもバッタリと出くわすのは御免こうむりたいもの。
それで筆者は下のような威嚇用の“爆音打ち上げロケット”を常備し、携行しています。
夕暮れ時や朝方に家屋近くで打ち上げるのはもちろん、山菜採りなどで山に入る時にもごあいさつ代わりの打ち上げをするのです。
「これから君の領分の山に入るよ、しばらくは近づいてはいけない」、と。
この爆音は猟銃の音にきわめて近く、これ一発で動物は反応して遠のいていきます。驚かせて申し訳ないことではあるけれども。

この爆音ロケットは行政が鳥獣害対策として予算措置を講じているもので、筆者は地区の(万世)コミュニティーセンターからありがたくいただいています。

筆者は携行のためにちょっとした工夫をしています。
最初はロケット設置のために栄養ドリンクの瓶を持ち歩いていたのですが、どうも重くてかさばります。そこで、爆音ロケットを4本ほど、ライター、そして設置のための筒と打ち上げに必要な一式を(習字用筆入れの)簡易ケースにコンパクトに収納したのです。
筒は(100円ショップにあった)太陽光ガーデンライトの胴体で、地面に刺さる部分は逆にすればすっぽりと筒に収まります。
これなら軽くてかさばらないし、とても機能的で登山や森林帯の山歩きにも打ってつけ、パテントが取れそうなほどに優れものだと思います(笑い)。

話は変わるけど、山菜採りで気をつけなくちゃならないのは毒草の認識と判別です。
山菜(採り)に興味のあるひとは是非覚えてほしいことです。

下は、みずみずしい葉や茎がとてもおいしそうに見えるけれども、強烈な毒を持つハシリドコロ(走野老/ナス科ハシリドコロ属)です。
赤茶色(正確には躑躅色/つつじいろというのだと思う)の花が特徴的ですが、花のない時期は要注意です。
中毒症状としては、嘔吐、下痢、血便、瞳孔散大、めまいや幻覚、異常興奮などを起こし、最悪の場合には死に至るということです。触った手で目をこすると瞳孔が開き、眩しく感じられる、ともあります。
あとで触れるサンゴクダチ(ゴマナ)にもちょっただけ似ていて注意が必要です。

もうひとつはトリカブト、このへんの種(しゅ)ではヤマトリカブト(山鳥兜/キンポウゲ科トリカブト属)。
これは厄介なことに、若葉が山菜のニリンソウ(二輪草/キンポウゲ科イチリンソウ属)の葉に見分けがつかないほどよく似ていて、しかもこのふたつは混生している場合も多いのです。

下の混生状態で、どれがトリカブトの葉でどれがニリンソウなのか分かるでしょうか。
見ただけではきっと分からないと思います。
どうしてもニリンソウを食べたいのなら、採取する株に白い花がついているかどうか、これが決定的な判断材料となります。
これを誤ったら、川中美幸の「二輪草」の甘いべっとりの愛どころの話ではなく(笑い)、悲恋も悲恋、悲惨なことになります。

トリカブトの中毒症状としては、食べると嘔吐・呼吸困難、臓器不全などから死に至り、摂取後数10秒で死亡する即効性があるとのことです。
そういえば年配の方なら記憶にあるのではないでしょうか、(1986年の)「トリカブト保険金殺人事件」が。これによってトリカブトの怖さを世に知らしめましたね。

トリカブトは、ドクウツギ(毒空木)とドクゼリ(毒芹)と並ぶ日本の三大有毒植物。
山歩きや野歩き、それから山菜採りにとって、このへんの知識は必須です。

*

さて、野山にタニウツギ(谷空木/スイカズラ科タニウツギ属)が咲きだす頃、いよいよワラビのお出ましです。


他の山菜に較べてもワラビ(蕨/コバノイシカグマ科ワラビ属)は特別。
ワラビは毎日食卓に上っても飽きの来ないおいしさです。おひたしによし、煮物によし、汁の実によしです。
ワラビはゼンマイとともに山菜の双璧、何といっても山菜界の最高峰、チョモランマ的存在です(笑い)。

5月に入って我がルーザの森にも町場からあるいは福島ナンバーのクルマが入るようになりますが、だいたいのねらいはふたつ、5月初旬ならコシアブラ、そして中旬ならワラビです。
山菜採りの向かう道筋を見れば、ゼンマイねらいというのは年々少なくなってきている感じがします。きっと採取後の処理があまりに面倒だからでしょうね。

下はワラビ場にあって、アドレナリン出っぱなしの相棒のヨーコさん。
群落を見つけて興奮している様子(笑い)。
手前の茶色い部分がワラビのホダ(昨秋に枯れた地上部)で、これがあるところは多くの収穫が期待できます。

別の日の、彼女の険しい表情、眼光の鋭さ(笑い)。
まわりの草と同化している中、ワラビを見つけんとするこの集中力は見上げたものです(笑い)。 

それにしてもワラビ採りというはのどかなものです。
ワラビは日の光降り、ヒバリ(雲雀)がピーチク鳴いていたりする野原に、まだまわりの草丈の短い中に、ニョキニョキと拳(こぶし)様の、ほんのり橙色(だいだいいろ)が差した頭をもたげて現れ出ています。
それを、ポキン、ポキンと折っていくのは、ただそれだけで軽やかな気分になろうというもの。楽しいのです。
そんなわけでワラビ採りは、ほどよいレジャーと言ってもよいかもしれない。
まわりの林からはツツドリ(筒鳥)の平和なホホーホホーだ。

 

で、この時期、ワラビ採りの最中に、高山植物として有名なタテヤマリンドウ(立山竜胆)やミヤマリンドウ(深山竜胆)にそっくりなハルリンドウ(春竜胆/リンドウ科リンドウ属)に出会ったりします。うれしくなります。
タテヤマリンドウやミヤマリンドウもハルリンドウの高山型変種のようですから、まったくの兄弟というものです。 

ワラビ採りをしていると、サンゴクダチ(標準和名はゴマナ/胡麻菜/キク科シオン属)の初々(ういうい)しい立ち姿にも会うことができます。
これは当米沢地方以外はあまり広まっていない山菜で、こちらでは味噌と一緒に切り和えにし胡麻をまぶしてご飯の友とします。柑橘系のさわやかな香りが広がります。
刻んだサンゴクダチを納豆に加えるのもグッドアイデア、納豆の味を引き立ててくれます。
当地方では、湯がいて乾燥させて、保存食として利用するひとも多いようです。

次の1枚は、夏季の開花時のサンゴクダチ(ゴマナ)。

同じように遭遇するのが、ナルコユリ(鳴子百合/キジカクシ科アマドコロ属)です。
ナルコユリはアマドコロ(甘野老)と姿かたちがきわめて似ていて判別がむずかしいのだけれど、茎がスムーズな円柱になっているのがナルコユリ、少々角ばってデコボコしているのがアマドコロと筆者は覚えています。
ナルコユリは甘みがあってやわらかく、おいしく食べられる山菜です。
アスパラガスよりは格段、甘いです。

 

下は、ノアザミ(野薊/キク科アザミ属)でしょうか。
アザミ類は立派な山菜。アザミに分類される種で食べられないものはありません。
我が家は一生懸命に採取したりはしないけど、ワラビやフキ(蕗)やアイコ(愛子。ミヤマイラクサ/深山刺草)などのさまざまな山菜とともにアザミも投入する山菜汁は最高の風味になります。

宮澤賢治の名作「なめとこ山の熊」には重要なシーンのひとつとして、谷の熊の母子があざみの芽をめぐって会話をする場面があります。物語にあるよう、クマにとってアザミは大好物なのだと思います。
それから筆者は、ウルイ(オオバギボウシ/大葉擬宝珠)やイタドリ(虎杖)、ミズ(ウワバミソウ/蟒蛇草)などを食べた跡を見たことがあったけど(カモシカの仕業かどうかは判別できないけれど)、クマが好む植物はワラビとゼンマイ以外はひとが好む山菜とそうたいした違いはなさそうです。生のワラビとゼンマイは苦すぎてたまらないでしょう。
クマも含めて動物たちは、食べられないものやおいしいものはしっかりと認識して食べているふうです。
当然ながら、ハシリドコロやトリカブトの存在も知っているでしょう。

*

以下には、このところの我が家で食卓に上った山菜の数々を。

下は、3種のおひたし。
左から、コシアブラ(漉油)、ハリギリ(針桐)、そしてコゴミ(屈)です。

おひたしに、時に細かくしたクルミをかけて。

下は、おひたしと天ぷら。
天ぷらは、タラ(楤)の芽、コゴミ、コシアブラ、ハリギリだと思います。
たしかに天ぷらはおいしいけど、それぞれの個性を消してしまうのはもったいない気がします。
天ぷらの残ったものは、あたたかい蕎麦にあげたり、天丼の具にもします。

下は、筆者のある日の昼食。
相棒は常勤の勤務のため、ウィークデーの昼は筆者が自分で用意してとることになります。
乾麺の蕎麦を茹でて、おひたしを添えて。
おひたしはコシアブラとハリギリ、それにアオハダ(青膚)の3種。

なお、蕎麦を盛っている皿は筆者のお気に入りのひとつ、大分県の小鹿田焼(おんたやき)です。
おひたしを載せた皿は、沖縄のやちむん(焼き物)。
小鹿田焼は通販(だったかな?)、やちむんは東京は駒場の日本民藝館で買ったものと思います。

当然ながら筆者は、乾麺の蕎麦をこれまでたくさん食べてきたけど、これ以上はないかなと出会ったのが“木曽路御岳そば”(はくばく社製)というものです。
一度試してみるといいと思いますが、蕎麦の香りが立ってまるで打ち立てのような風味と食感です。
最大の特徴は乾麺にもかかわらず太さが一定していず、その1本にも凹凸があるということでしょう。この独特な加工がのどごしの良さにつながっているようです。
他に較べて少々割高ですが、我が家では買い置きが底をつきそうになると、即、amazonです(笑い)。

サンゴクダチの切り和え。
これは味噌のかわりに、庄内地方で作られている伝統的な発酵食品の“しょうゆの実”(ハナブサ食品)を加えています。

筆者のある日の昼食のオイルパスタ。
名づけて、“アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ&シャウエッセンソーセージ・コシアブラオリジナル”(笑い)。
何のことはない、普段のオイルパスタにコシアブラを混ぜ込んだだけのことで。コシアブラのキドさ(苦み)が利いて美味いのです。
ちょっとした工夫としては、味つけの一部に、自家製の“梅鰹”(漬け込んだ梅干しに削り節を混ぜたもの)を入れていること。少々の酸っぱさも味を深くします。
筆者は山菜の時期になると、前回のsignalでも触れた“ウコギ科四天王”をパスタに混ぜ込むことが多くなりますが、これらは本当によく合うと思います。
みどりの彩りもおいしさを引き立てます。

山ブキの炒め煮。
自分で作って言うのも何だが、これはおいしい。ご飯もお酒もススムくん!です(笑い)。
米沢の春に、この山ブキの炒め煮は欠かすことができません。この時期になると、大型のマーケットにさえ、山のフキがたくさん並ぶほどですから、いかに市民がこの食材を愛しているかが分かります。
本日作り置きがなくなったので、また作ンなね!(笑い)

フキの炒め煮を盛った皿も沖縄のやちむんです。このみどりとブラウンの釉薬の美しさ。

アケビの萌えを茹でて生卵と一緒に。ここに醤油を差して。これはまちがいなく絶品です。
これぞB級グルメ山菜編のグランドチャンピオンと言ってもいいかもしれない(笑い)。

卵の黄身がずいぶん覚めた黄色だとお思いの向きもあろうかと思うけど、自然な状態で飼われているニワトリの卵というのはこういう色味なのだそうで。
とすると、橙(だいだい)の濃い色の黄身も目にすることがあるけれど、餌に色素の元になるものとかずいぶんといろんなものが混ぜ合わされて与えれているのだと思います。たぶん、不健康な飼い方をして。

我が家にぜいたくというのはほとんどないけれども、卵は(少々割高だけど)飼い方や出自のしっかりしたものを選んで購入しています。

ある日の朝食のひと品。
アイコのおひたしに、いただきもののウドを味噌をつけて、生で。それからいただきもののニラを卵で和えて。

出ました。山菜の真打ち、ワラビのおひたし。
我が家では千切りのショウガと自家栽培の唐辛子を添えて醤油が定番だけど、青森ではワサビ醤油で食べるのが普及しているのだとか。ところ変われば、です。多くはめんつゆなのでしょうか。
ワラビはとにかくおいしいです。

皿は近隣、長井市の陶工房で焼かれたもの。

(村山地方で主に食べられている)山形名物の“冷たい肉蕎麦”(城北麺工)に、ワラビとアイコをトッピングして。
載っている肉は生協扱いの、麺とタイアップ商品のかしわとか。
筆者は今回、冷たい肉蕎麦というものをはじめて食べたけど、なかなか美味でした。
汁がキンキンに冷えているので、暑い夏には最高でしょうね。

*

家の周りはもうこんなに美しくなりました。
野鳥がさかんに鳴きかわすようになっているのだけれど、いったい誰が来ているものやら鳴声だけでは分からないものが多く、それは悔しいところです。

今の時期なら、ツツドリ、ウグイス(鶯)、シジュウカラ(四十雀)、ヤマガラ(山雀)、オオルリ(大瑠璃)、カケス(懸巣)にアオゲラ(緑啄木鳥)、それからアカショウビン(赤翡翠)ぐらいならとても特徴的なので分かるのですが、その他はねえ。
そうそう、本日22日、イカル(鵤)という鳥の美しい鳴き声を聴き分けました。いやあ、美しいです。
せっかくの環境、これから少しずつ覚えていければいいなあと思っています。

我が家の天然の庭のアオダモ(青梻/モクセイ科トリネコ属)がポシャポシャの白い花をつけました。
これを目にするとゼンマイ採りのスイッチが入ります。
行かなくちゃ(笑い)!

ゼンマイ採りの現場はここ。家から歩いて10分とかからない場所です。

ゼンマイが出ている場所にはチゴユリ(稚児百合/イヌサフラン科チゴユリ属)が咲いていることも多いです。
それから、(山に入ったのは19日のことだけど、)森の初夏を代表するエゾハルゼミ(蝦夷春蝉)の初鳴きを耳にしました。渓流でカジカガエルの鳴く声も。

地べたの様々な植物の彩りも、森をつつむ空気に響くにぎやかな声も、みんなみんな春礼讃(らいさん)の歌を歌っているようです。筆者も一緒になってそれに同調しています。

そして、ゼンマイ(薇/ゼンマイ科ゼンマイ属)。
ゼンマイが他の山菜と決定的に違うのは、口に入るまでの手間がとてもかかるということがあります。採取してから手をかけて乾燥させ、さらには半年という時間を待たないと食べられない食材なんて他にあるでしょうか。
でも、そうしてでもこの食材を得たいという思いは強いです。

筆者が行く現場はスギ林の半日蔭から日の当たる広葉樹の林までの(横幅100メートル、縦幅50メートルほどの)狭い範囲です。斜面の角度はありますが、決して危険なところではありません。
けれども、こんな岩場の急峻な場所も一部あります。こういう急峻な岩と土の境目あたりに太くてみずみずしいものが往々にして出ているものです。

歩き回った末にたどりつく、いつもの心休まる淵(笊籬淵)。ここで休んで、掌で水を掬(すく)ってのどを潤して…。
いやあ、この淵に来ると正真正銘の春を思います。
淵の底からは美しい光とともにエーテルが湧きたつようで、酔っていまいそうなのです。

狭い範囲を(登ったり下りたりあるいは前後左右に動いて、あるいはぐるっと回って)2時間ほども歩けばリュックは満杯、バッグにいっぱいというところです。
このぐらいになると歩くのもたいへん、まっすぐに歩けずにヨロヨロとモックラコックラになります(笑い)。
家までは歩いて10分弱というのに、家がはるかに遠いのです(笑い)。 

帰り道で、ルイヨウボタン(類葉牡丹/メギ科ルイヨウボタン属)が見送ってくれました。 

家にたどりついて、工房の作業テーブルにリュックとバックを開けるとこのくらいの量です。

夜に相棒と共に下処理をし(茎の堅い部分を取り去って)、よい天候を見込んで翌日に野外用としている薪ストーブに火を入れました。

この薪ストーブは3,000円ほどで購入して25年以上は経つはずですが、今もって現役です。
新潟はホンマ製作所の時計型ストーブ、とても重宝しています。

燃料は、薪にもならないような木の屑ばかり。今建築中のリス小屋付属の下屋(げや)の現場まわりの残材とか、古くなってボロボロのベニヤを砕いてとか、まわりの枯れ枝とか。
こういうもので熱を得、それが湯を沸かし、ゼンマイを茹で上げることができるのですから素晴らしいことだと思います。
エネルギーを電気に頼らないというのは、ささやかだけどうれしいことです。
※“リス小屋”については、昨年2021年末の長期連載「軽トラに住まいを」に詳しい。

茹でて美しい萌黄(もえぎ)色から鶸色(ひわいろ)に変わったゼンマイ。
この色の変化が引き上げのサインです。

ゼンマイのために干場をこしらえて、茹でたものを広げたところ。
ゼンマイの乾燥物を作るのが繊細なのは、すべては日光の照り具合、日差しの強さに左右されるためです。
曇り空なら乾燥時間はどんどんと伸び、雨ならアウトです。よって、ゼンマイ干しはお日様と相談しながらの作業になります。
茹で上げた後に雨が3日も続けば、せっかく採ってきたゼンマイなのに、腐敗が始まってすべてがダメになってしまいます。がっかりです。この経験もあります。

雨が続いた場合の対処法として、5月の下旬ころまでは室内で薪ストーブを焚けるようにして、乾燥を促進する策を取ります。けれども日光の力には遠く及びません。
日干しではゼンマイが発するよい香りに包まれるのに、室内での乾燥では香りはあまりしないものです。
このことは、天日に頼る昆布干しとかシラス干しとか、あるいは切干し大根作りも同じようなのかもしれない。天日乾燥の米がおいしいのはきっとこのためなのかも。
太陽は偉大で特別です。

時間の経過とともに干場の面積は徐々に狭まっていきます。

ここで相棒が満足そうに(自分が苦労してやりましたふうに)笑っているけど、採ったのも、干したのも、揉んだのも実は筆者です(笑い)。

干したゼンマイは時間の経過とともに軽くなっていくけど、元の重量からしたら10分の1にも減ってしまいます。
ヘトヘトになって運んできた大量のゼンマイは、茹で上げと乾燥、それから数度の揉みを入れたのちには下の写真のようになります。

乾燥ゼンマイの市場価格は今ならキロ当たり平均で2万から3万円くらいでしょうか。上物は4万円くらいはするのでは。ゼンマイはそれほどに好まれ、価値が高いということです。
これで生計を立てているひともいるわけで、市場の取引としてはこれぐらいが最低ラインではないでしょうか。

筆者たちはこれを自家消費する以外はお世話になっている方に差し上げたり送ったり、お客様がおいでになった時には土産に持って行ってもらったりします。
時間と手間をかけますからね、こころを込めた品と自負しています。

こうして乾ききったものを半年ほども保管すると味が落ち着くといいます。
そして、冬分のゼンマイの煮物は本当に楽しみ。それから、ビビンバの具にはこれは欠かせない食材で、これも楽しみ。

わずか数日でみどりはグンと濃くなって。

今はツツドリがのどかに鳴いているけど、やがてホトトギス(不如帰)が甲高い声を上げる頃には夏の匂いがするでしょう。
エゾハルゼミのけたたましい合唱ももうすぐです。そしたら夏がやってきます。

ゼンマイは一気に展開してもう終了です。今年はいやに期間が短かったなあ。
ワラビはあと10日ほどもどんどんと採れることでしょう。
そして山菜三昧な日々のラストは6月中旬のネマガリタケ(根曲竹)、もうその光景が見えるようです。
まだまだ続く、山と同化する幸いな日々…。

それじゃあ、また。バイバイ!

 

※本文に割り込んでいる写真はサムネイル判で表示されています。これは本来のタテヨコの比から左右または上下が切られている状態です。写真はクリックすると拡大し、本来の比の画像が得られます。