森の小径

オウレンの水辺

この春先、季節の揺り戻し(三寒四温)が何度もくりかえされたけれど、もう“早春”ではなくまさに“春”というにふさわしい季節となってきました(筆者は“早春”と“春”を使い分けるけれど、その基準は簡単です。周りに雪があるうちは早春、ほとんど消えれば春ということです)。

工房の前の、現在(4月16日)の様子。
ここは河岸段丘にして南が台地になっていて、その北側(工房の真正面)の斜面にだけ雪がわずかに残っています。が、消え去るのは時間の問題です。
雪は去年よりぐっと少なかったのに、消え去りは去年より4、5日遅いようです。雪の消え去りが降雪の量と比例しないのですから、季節というのは分からないものです。

「春は毎年やってくるが、二度と同じ春はめぐってこない」と言ったのは、ロシアの児童文学作家(動物文学)のヴィタリー=ビアンキだったと思うけど、その言葉通りの春です。毎年毎年春のくる様子を観察しているけれども、本当にふたつと同じ顔をした春というものはありません。
でもこの箴言、春を小道具にして、今という時間の大切さを言っているのですよね。名言ですね。

フクジュソウ(福寿草)より少し早く、雪を割って咲く花があります。それはキクバオウレン(菊葉黄連)です
(一般に単にオウレンと言った場合は、このキクバオウレンを指します)。
とりたてて希少な植物ではないようですが、ルーザの森にあって筆者は一箇所だけにしか確認できていません。
そこは清冽な流れのそば、ひと知れぬ秘密の場所です。
春を感じたくなると真っ先に行っては佇(たたず)んでいることがあります。雪解けのサラサラとした流れの音、流れが跳ね返すまぶしい光、乱反射、そしてその傍らの白く清楚なオウレンの花、その見事な群落……。
長く重い冬を越えて、ようやく春の匂いを確かにかぐことができる、それがこのオウレンの水辺なのです。

オウレンは、秋に掘り上げた根茎を乾燥させたものが生薬の黄連(おうれん)になります。
苦みで味覚神経を刺激し、唾液や胃液の分泌を促して、胃の粘膜に直接作用する効果があるのだそうです。そうしてオウレンは、昔から健胃・整腸剤として珍重されてきた植物とのこと。

ちなみに、キンポウゲ科のオウレン属には他に、ミツバオウレン(三葉黄連)、バイカオウレン(梅花黄連)などがあります。
バイカオウレンとミツバオウレンは高山植物。この辺では天元台から西吾妻山にかけて見ることができます。キクバオウレンとは同じ属ながら、印象はずいぶん違いますね。

以下は、過去の画像から。下が、ミツバオウレン。次が、バイカオウレン。ミツバオウレンと似ているけれども、葉が違います。

オウレンの水辺は、また来年です。来年、また来ます。

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久しぶりの、フクジュソウ咲く野辺に行くと、少しばかりの流れにクレソン(オランダガラシ=和蘭芥子)です。
少々いただいて、パスタの付け合わせに、サラダにも載せて。これがいい香味を放つのです。

有用な山菜なのに、ここ米沢(置賜地方)では見向きもされないのがカンゾウ(萱草)です。同じ山形県では庄内地方ではかなり一般的に食されているというのに、です。この辺では多すぎて、希少価値に乏しいということですかね。
我が家にとってカンゾウは春の味覚のシンボルのひとつ、一度二度とおひたしにして酢味噌でいただきます。ニンニクをきかせた炒め物も美味です。

ユリ科のカンゾウにはここらには2種あって、それはヤブカンゾウ(藪萱草)とノカンゾウ(野萱草)。初夏には野生にして豪華な、赤橙の花が咲きます。ヤブカンゾウは(半)八重、ノカンゾウは一重です。ここでいうカンゾウはヤブカンゾウです。

下は、初夏のヤブカンゾウとノカンゾウ。花はともに、中華料理の食材(金針菜)となるとのこと。

先に紹介したカエルの卵はもう、小さなオタマジャクシ。うごめきがすごいです。

アズマイチゲ(東一華)が咲いて。

キクザキイチゲ(菊咲一華)が咲いて。
アズマイチゲとキクザキイチゲはとてもよく似ているけれども、葉っぱはまるで違います。

キクザキイチゲの一種、ルリイチゲ(瑠璃一華)も咲いて。

これからルーザの森にも、狂おしい、ポカポカの春がやってきます。