森の生活

冷や汁

本日は(2025年)12月13日、外は小雪です。
小生、2、3年に1度の割ぐらいで風邪をひくのだけれだ(それだけひかないということ、丈夫ということ)、昨日とうとう風邪をひいてしまいました。
関節が痛く、熱も上がり(37℃)、のどがヒリヒリ、身体全体がだるく、どうにもやるせない時間を過ごしました。工房仕事が順調にいっていただけに続きができないのは残念!

相棒のヨーコさんは職業柄、検査キットを持っているので、それを使って調べてみると、COVID-19もインフルエンザA型B型ともいずれも陰性で安心しました。
こういうときは寝るに限ると思って、寝床をこさえていつでも横になれる態勢をとっていました。でも結局、こうしてデスクを前にするのですが(笑い)

さて、今回のsignalは料理編、「冷や汁」というものについてです。
米沢・置賜(おいたま、おきたま)地方以外に広がりの見られない郷土料理の代表格、滋味深い料理の世界へのお誘いです。

本格的に雪が降ってきました。
我が庭の天然のクリスマスツリーのモミ(樅)の木も、こんな感じ。
前に、モミは日本特産と書いたことがあったけど、それはマツ科モミ属のモミという固有種についてのことで、ヨーロッパには別種のヨーロッパモミがあるとのこと。
ただ、本場ヨーロッパの実際のクリスマスツリーはマツ科トウヒ属のドイツトウヒ(独逸唐檜)が一般的なようです。

5日の夜、外はずいぶんと明るいものだと思えば満月でした。


雪夜の満月って、一種独特に幻想的です。
それは夜更けた11時ごろだったと思うけど、カメラを持ってパシャリ、パシャリ。
月の光ってすばらしいです。

月の光だけで、こんなに明るい。
ベートーヴェンに「月光ソナタ」といううつくしいピアノ曲があるけど、彼はいつ、どんな月を見ていたんだろう。

干し柿。順調に熟成が進んでいるようで。
相棒は毎朝、この柿を見るのが日課で愛おしんでいるよう(笑い)。


さて、冷や汁。
冷や汁は置賜地方の代表的な郷土料理。
冷たい汁と書かれると何か汁物と勘違いされることが多いですが、 汁物ではありません。独特な手法のひたしものの一種、いわば具だくさんのおひたしと言えます。
冷や汁は、主材料としての干し貝柱、干しシイタケからの出し汁に調味料を合わせて、茹でた季節の野菜などを合わせたものです。

筆者がこれをつくるようになったのは5、6年くらい前からだと思うけど、幼い頃の舌の記憶が急によみがえってきたのでした。
たぶん、育った家では材料は代用品でまかなっていたように思うのですが、その記憶は雄弁なのです。

この料理の特徴は、四季折々の旬の山菜や野菜を利用できること、季節感満載なのです。
同じ「〇〇」というくくりの料理で、四季折々にバリエーション豊かに表現できる料理ってほかにあるでしょうか。
冷や汁は使う材料が高価だし、めんどうくさく手間ひまがかかるので、なかなか日常的な料理にはなりません。が、当地方の古くからの家庭では祝い事などのハレの日、盆や暮れや正月などの特別な日には決まってつくる習わしがあります。
この辺の、それなりの格を持っている旅館では定番のひと品になっているのではないでしょうか。

筆者はハレの日や盆と正月もさることながら、大切な客人がおいでの時やそいういう家庭に訪問するときなどはつくって携えたりします。

干しシイタケはどこでも手に入るにしても(我が家は近くの障がい者施設から購入)、干し貝柱はとても高価なのでネット通販のブレーク品(B級品)です。

今回は、8人分で600ミリリットルの水を使い、そこに干しシイタケと干し貝柱をひたしておきます。冷暗所でひと晩ほどです。
時間が経ったら、貝柱をていねいにほぐします。
この材料と出し汁が冷や汁の味を決めていきます。

凍みこんにゃくもネット通販頼りですが、これも高いです。9枚入りで1,500円ほどです。

凍みこんにゃくは湯がいて、もんで、水に濁りがなくなるまでそれをくりかえします。

それに、冷や汁ではうち豆も味の決め手です。
以上にみりんと醤油を加えれば主材料の出来上がりです。

今回のつくるきっかけというのは、ふと立ち寄った道の駅(道の駅米沢…道の駅は数多けれど、ここほどスマートで、産直品も安価で、使いやすいところもないと思っている)で、米沢近郊の小野川温泉の名産の豆もやしが目に留まったことからです。
この豆もやしは温泉熱で栽培している特別なものです。
他の材料はいつでもできるようにそろっているし、じゃあ、思い切ってやろうと思った次第で。

今回はさらにニンジンとホウレンソウ、それにヒラタケを加えたけど、キャベツもほしかったところ。
家に帰ったらキャベツは切れていました(-_-;)。

これらは材料によって茹で時間がちがうので、それが少しめんどうです。

貝柱とシイタケでとった出し汁に調味料(醤油とみりん)を加え、水で戻したうち豆と千切りの凍みコンニャクを入れてをひと煮立ちさせます。
冷ました汁に、茹でて水気を切った野菜を混ざ合わせれば、冷や汁の完成です。
このふたつの材料の合わせは、提供の直前です。

冷や汁のもともとは米沢藩の陣中料理で、合戦の出陣式の際に振る舞われていたとのこと。
生きるか死ぬかという場面を前に、天上の食(じき)をとも考えたものか、どうか。

盛った皿はやちむん(沖縄陶器)。

取り分けたのは古伊万里の染め付けです。わきの小皿にはちょうど届いたばかりのユズの、皮の千切りが載っています。
この小皿は古伊万里の印判です。
今回の冷や汁は懇意の家庭にお持ちし、そして久しぶりに会う友人に手土産として携えました。
喜んでもらえたのでよかったです。

このさっぱりとしつつ滋味深い味わい…、自分の最後の晩餐には今までは「卵焼き」をリクエストしていたけど(笑い)、もう今は「冷や汁」一択です(笑い)。
この冷や汁を食す機会があったら、いっぺんに当地方のファンになって移住したくなるのではないだろうか(笑い)。
別な言い方をすれば、冷や汁を知らないひとは人生の半分を損している(笑い)。知ったら人生が倍豊かになる(笑い)、というぐらいにおいしいのです。
冷や汁、恐るべしです(笑い)。

※今回の記事は、『保存食・発酵食 おきたま伝承料理集 つなぐ』(おきたま食文化研究会2018)、『米沢郷土料理レシピ集 おわえなえ』(米沢商工会議所女性会2012)を参考としています。

雪が降ってきて、そろそろクリスマスも近いことだしと思い、毎年のことながら、庭のモミの枝を主屋の玄関口とヒュッテのドアに飾りました。
クリスマスが近いということは、冬至も近いということ。
冬至が来れば、あとはわずかずつでも春に向かって日足が伸びていきます。これは希望というものです。

ところで風邪は?
養生よろしく、もうだいぶ回復して今日の夕方には元の身体に戻るような予感です。
でも、身体が動かないときの冬の寒さは骨身に堪えるものですね。
みなさん、どうぞご自愛ください。

それじゃあ、また。
バイバイ!

 

※本文に割り込んでいる写真はサムネイル判で表示されています。これは本来のタテヨコの比から左右または上下が切られている状態です。写真はクリックすると拡大し、本来の比の画像が得られます。また、写真の下にあるスライドショー表示をクリックすると写真が順次移りかわります。