山歩き

彩りの西吾妻、春夏篇

今はもう、10月の半ば過ぎ。
近郊の田んぼの稲は刈り取られて、風景をおおう色は少しずつ秋の深まりを感じさせています。ここルーザの森の木々も色づきはじめました。

筆者は、今年は特に、西吾妻を歩きました。
6月11日のロープウェイとリフトの開通に合わせて出かけたのを手はじめに、この10月11日までに計12回を数えました。これまでで最多です。
取れる時間や興味などからその日によってさまざまなコースを取りますが、たとえばリフトトップから山頂の西吾妻山(2,035メートル)までは約1時間半の行程、帰りは少し遠回りをして1時間50分程度、3時間と少しの山歩きは筆者にとっては今ではちょうどよい運動量、軽いハイキングのようなものです。疲れを翌日に持ち越すこともありません。
西吾妻の山歩きは、仕事の区切りとして暮らしのアクセントとして、とても手軽なリフレッシュ時間なのです。

ということで、今回のsignalは西吾妻の四季の移ろいをテーマに2回シリーズの第1回として、題して「彩りの西吾妻、春夏篇」です。
ひき続いて、後篇の「秋冬篇」をアップする予定です。

下は、雪がことのほか多かった今年の初日、6月11日の様子です。
雪があまりに多くて大凹(おおくぼ)までの予定を変更して岩海美しい人形石に向かっているあたり。
ここでもこの時期にしてはめずらしい大雪渓という感じでした。

下は、上から20日後の大凹です。7月に入って雪がこんなに多く残っているのはここ10年ではじめてのことです。
雪の消えたところからはさまざまな高山植物があらわれ出ていました。
この雪解けの頃の花の美しさ、その清潔なまでのみずみずしさといったら…。 

西吾妻を代表する針葉樹のオオシラビソ(大白檜曽)の林床に、コバイケイソウ(小梅蕙草/ユリ科シュロソウ属)の若葉が出ていました。

やがてコバイケイソウの花は咲き…。
かつて登った栗駒山とか会津駒ケ岳で花のないコバイケイソウの群落に出会って不審に思ったことがあったけど、聞くところによれば、コバイケイソウには開花に周期性があるとのこと。
しかし毎年観察を続けている西吾妻では花のまったくない群落というものを見たことがありません。

サンカヨウ(山荷葉/メギ科サンカヨウ属)は、大きな葉から出た茎に数個の白い花をつけた独特の姿が印象的です。
筆者の、特に好きな花のひとつです。

雨にぬれると白い花びらは透きとおるようになります。
このしおらしい美しさを見るのも楽しみのひとつ。

サンカヨウはやがて青紫の宝石のような実をつけます。
実を口に入れると、甘い香りが広がります。実には大きなタネが入っています。

ヒロハユキザサ(広葉雪笹/ユリ科マイズルソウ属)も雪解けを待って出てきます。
この近縁種のユキザサ(雪笹)は我が家の敷地にもありますが、若葉はいずれも山菜です。

春真っ先の、ショウジョウバカマ(猩々袴/メランチウム科ショウジョウバカマ属)。
ショウジョウバカマは米沢では市中の里山(250メートルぐらい)から高山まで見られ、垂直分布が広い植物です。 

イワカガミ(岩鏡/イワウメ科イワカガミ属)。
茎の先端に集まるイワカガミの花のひとつひとつはラッパのように先が広がり、たくさんの切り込みがある独特な花姿をしています。
高山植物の代表のような花ですが、この花も垂直分布が広いです。我がルーザの森にもたくさんあります。
ただし、標高が上がるにつれて葉がどんどんと小さくなり、花の色味が濃くなってきます。

西吾妻の名花のひとつ、バイカオウレン(梅花黄蓮/キンポウゲ科オウレン属)。
雪解けを待ってすぐ開花して、あまり間を置かずに消えてしまいます。7月に入ればもう見られないのでは。
なお、バイカオウレンは西吾妻が北限です。

ミツバオウレン(三葉黄蓮/キンポウゲ科オウレン属)。
湿原にも見られますが、天元台高原のスキー場斜面(以降、“スキー場”とするのは天元台を指す)に大群落をつくっています。

ツマトリソウ(褄取草/サクラソウ科ツマトリソウ属)。
花冠は平らにして大きく7裂するのが普通というのに、西吾妻では8裂も6裂のものもよく見かけます。

 

マイヅルソウ(舞鶴草/キジカクシ科マイヅルソウ属)。
西吾妻では垂直的に広範囲に分布していますが、スキー場斜面にはみごとな大群落を形成しています。
なお、数種のガイドブックには生育は山地帯(吾妻連峰においては、1,500メートル以下)から亜高山帯(1,500~1,900メートル)とあるけど、市街近郊の標高250メートルそこそこの場所にも群落があって驚いたことがあります。

西吾妻の名花のひとつ、ヒナザクラ(雛桜/サクラソウ科サクラソウ属)。
この清楚な美しさをたたえるヒナザクラの北限は八甲田山、南限がここ西吾妻です。
つまり、ヒナザクラはミス東北、雪田を形成する多雪地帯に特徴的な花なのです。

ヒメイチゲ(姫一華/キンポウゲ科イチリンソウ属)。
“イチゲ” と名のつく花は、里ではキクザキイチゲ(菊咲一華)やアズマイチゲ(東一華)がなじみだけれど、高山のこれはまた格別です。
この花は群れることがないそうで、そういう自立性や独立性にも惹かれます。
筆者はかもしか展望台や西大巓(にしだいてん)への登山路で見かけましたが、数は本当に少なく貴重です。

コミヤマカタバミ(小深山片喰/カタバミ科カタバミ属)。
人形石から中大巓(なかだいてん)の北回りコースでこの花を発見したときはうれしかったです。とても希少です。
なお、花がこれより少し大きめの近縁種ミヤマカタバキミ(深山片喰)は我がルーザの森にも咲きます。

ワタスゲ(綿菅/カヤツリグサ科ワタスゲ属)。
綿のようになっているのは実で、その前の花というのはまったく地味なものです。
このワタスゲの群落は尾瀬ヶ原が有名だけれど、西吾妻もどうしてどうして。中大巓や大凹や小凹(こくぼ)の湿原、東に延びる弥兵衛平湿原への道々にも広がっています。

ワタスゲと木道は初夏の風景として絵になります。

高山植物の代表格といってもよいチングルマ(稚児車/バラ科ダイコンソウ属)。
とても樹木には見えないけれども、落葉小低木です。
花も美しいけど、花後のフワフワの毛のような実もみごとな景色をつくっています。
秋の紅葉もすばらしい発色をして楽しませてくれます。
アーモンドグリコが “1粒で 2度おいしい” なら、チングルマは “ひとつで3度おいしい” です(笑い)。

雪解け後すぐに開花するミネズオウ(峰蘇芳/ツツジ科ミネズオウ属)。
直径5ミリほどの小さな花をつける常緑小低木。
人形石などの岩場に多く分布しています。

コメバツガザクラ(米葉栂桜/ツツジ科コメバツガザクラ属)。常緑小低木。
これもやはり雪解けと同時に顔を出す早春の花の代表格。
ミネズオウにしてもコメバツガザクラにしても、こんな目立たない小さな花でも虫たちを引きつける魅力を備えているのだろうと思います。受粉しないことには生命はつながりませんから。
春真っ先というのが戦略でもあるのでしょうか。何か独特なにおいでも出すものなのかどうか。

アオノツガザクラ(青栂桜ツツジ科ツガザクラ属)。
イワカガミ(岩鏡)と一緒の場面をよく見かけるけど、そのコントラストがきれいです。

6月も半ばともなると筆者はソワソワ。なにせ、天元台高原にネマガリダケ(根曲竹/イネ科ササ属。標準和名はチシマザサ/千島笹)が出はじめますので。
この筍は絶品です。鯖缶とともに厚揚げとネマガリダケを味噌仕立てにした汁物のおいしさは筆舌に尽くしがたいものです。

※天元台高原は磐梯朝日国立公園の“磐梯吾妻・猪苗代エリア”の中に含まれていますが、この筍採りは禁止の御触れが出されているわけでもなく、むしろ観光資源として宣伝もされています。これは、“森林生態系保護地域設定”(1995年)からはずれていると解釈すればよいのか、それとも地域社会(会社=天元台高原)と環境行政とのなれ合いと結託の結果なのか、いずれにせよ、筆者のような山菜採りはこの時期はねらって天元台に行きます。

ムラサキヤシオツツジ(紫八汐躑躅/ツツジ科ツツジ属)。
ムラサキヤシオは天元台高原から中大巓中腹までによく見ることができます。
吾妻連峰の東端の磐梯吾妻スカイライン沿線や裏磐梯にはたくさんのムラサキヤシオが咲いていますが、南に行けば行くほど色が濃くなっている印象です。
裏磐梯の五色沼あたりのものは桃色というよりは韓紅(からくれない)という趣きです。
実はこの花は我が方にもごくわずかながらありますが、写真のものよりももっとぐっとうすい色です。
名の “八汐” というのは、染料に8回ほども入れて染め上げる色合いというもの。この名はそれだけ花の色の美しさを象徴していると思います。

雪が解けて少しすると、イワイチョウ(岩銀杏/ミツガシワ科イワイチョウ属)がそこかしこに咲きます。
“イチョウ”は、銀杏の根元の幼い葉の形から来ているようです。たしかに、銀杏の幼い葉は丸まっているものも多くあります。

ゴゼンタチバナ(御前橘/ミズキ科ミズキ属)。
御前とは、白山の最高峰の御前峰からきているとのことです。

第2リフト下に見られるツバメオモト(燕万年青/ユリ科ツバメオモト属)。
ガイドブックによれば、西大巓から白布峠にかけての林床に分布があるのだとか。
ツバメオモトは野生の花とは思えないほどの豪華さです。
“ツバメ”とは、花後の青い液果(サンカヨウの実そっくり)が燕の頭に似ているからということですが、飛躍的な想像力なものです(笑い)。

ヤマハハコ(山母子/キク科ヤマハハコ属)。
この名は里の平地に生えるハハコグサ(母子草。春の七草の御形/ゴギョウ)に似ているからとのこと。けっこう違うと思うけど(笑い)。
ただ河原に咲くカワラハハコ(河原母子)にはとても似ています。
山頂近くまでの道々のそこかしこに見られますが、スキー場斜面には大群落を形成しています。

エンレイソウ(延齢草/シュロソウ科エンレイソウ属)。針葉樹林の林床の湿った場所に見られます。
これは高山でなくても我がルーザの森でも普通にあります。
大きな三つ葉の中に濃紫色のがく片をもつ小さな花が咲きます。その後に大きな実となり、黒熟すると食べられます。

ミヤマホツツジ(深山穂躑躅/ツツジ科ホツツジ属)。
3枚の花びらが反り返る独特な花姿です。
この里型のホツツジ(穂躑躅)は我が家の敷地内にも咲いています。

うしろに控えるは飯豊連峰。かもしか展望台にて。

ふりかえって、筆者はなんで山に登り、山を歩こうとするんだろうと思うことがあります。
友人や知り合いに声をかけても、オレはもう無理とか、もっと体重を落としてからとかいって山を敬遠するひとは多いのに。
でも山を歩くというのは、疲れをともなうのはたしかだけれど、それ以上に楽しいこと、それを越えてワクワクすること、美しい景色や花々に会える感動があるのもたしか。

山は、公園や街のように人工物ではありません。
公園にせよ街にせよ、ニンゲンが加工してつくり上げたものというのはどうも自分勝手で傲慢さがにおって仕方ないのだけれど、それは筆者の志向・性向がそうさせているのだと思います。
だからというべきか、筆者にしたら山に向かうというのはどこか清浄な場所に入っていくという感覚があるのです。
そして山に惹かれ足を向けるひとというのはそれだけでもう親近感を持ってしまいます。何気に話しても、通じ合うように思います。

下は、ミヤマリンドウ(深山竜胆/リンドウ科リンドウ属)。
これにそっくりなものにタテヤマリンドウ(立山竜胆)がありますが、タテヤマリンドウには花の内側に濃い色の点や線のような斑(ふ)が入っています。斑が入らないのがミヤマリンドウとして区別します。
色的には、ミヤマリンドウの方がぐっと青く色濃いです。
7月の半ば頃になると、道々にたくさんのミヤマリンドウに出会えます。この沈潜するあざやかな青が美しいです。

それで、今年の発見の第一は、大凹にてミヤマリンドウの白色とうすいすみれ色した株を見つけたこと。
うれしかったです。
誰にもいたずらされずに、ずーっとこのまま咲き続けてほしいと願っています。

イワオトギリ(岩弟切/オトギリソウ科オトギリソウ属)。
里山の、薬効多いとされるオトギリソウ(弟切草)の高山型です。

ミヤマキンバイ(深山金梅/バラ科キジムシロ属)。
この花は西吾妻にあってはめずらしいもので、筆者は岩海美しい天狗岩の片隅にひと株のみ見るきりです。希少です。

ハクサンチドリ(白山千鳥/ラン科ハクサンチドリ属)。
一見ヒヤシンスに似て、花姿が美しいです。
スキー場斜面や弥兵衛平湿原から少し下った金明水あたりでよく見かけていました。

ノビネチドリ(延根千鳥/ラン科ノビネチドリ属)。
スキー場斜面で普通に見られます。
ハクサンチドリとよく似ていますが、こちらは葉がとても広いです。

ネバリノギラン(粘芒蘭/キンコウカ科ソクシンラン属)。
この名の通り茎にさわるとネバネバしますが、同じようにネバネバするムシトリナデシコ(虫捕撫子)のように、蜜を盗むだけの蟻の侵入を防ぐため?とも思えないし。
近縁のノギラン(芒蘭)は我が家の敷地に生えていますが、両方とも秋の紅葉がとても美しいです。

キンコウカ(金光花/キンコウカ科キンコウカ属)。
黄色な星形の花を房状につけます。高層湿原にてたびたび大群落を形成しています。
西吾妻小屋のちかくや小凹の池塘(ちとう)群あたりでよく見かけます。 

キバナノコマノツメ(黄花駒爪/スミレ科スミレ属)。
キバナノコマノツメはれっきとしたスミレであるのに、 “スミレ” の名のないめずらしい種。
葉が馬の蹄(ひずめ)に似ているからというのが命名のいわれのようです。
大凹の水場付近に咲いています。

以下は、秋においしい実のなる4種の花。

コケモモ(苔桃/ツツジ科スノキ属)。
かもしか展望台や人形石、天狗岩などのロックガーデン(岩場・岩庭)でよく見かけます。
花後に赤い果実がつきますが、これは絶品です。

クロウスゴ(黒臼子/ツツジ科スノキ属)。
果実は日本のブルーベリーの1種で、とてもおいしいです。

オオバスノキ(大葉酢木/ツツジ科スノキ属)。
この果実もブルーベリーの1種で、とてもおいしいです。
クロウスゴとこのオオバスノキの区別は花でなら少しわかってきましたが、実と葉だけではなかなか見分けはむずかしいです。そっくりなのです。
筆者は悔しいけど、この区別にまだ自信が持てていません。

クロマメノキ(黒豆木/ツツジ科スノキ属)。
この果実もブルーベリーの1種、果実だけなら形にしても玉の大きさにしてもそして味にしても、これが最も近い和製ブルーベリーです。
とてもおいしいです。 

上と花姿が似ているサラサドウダン(更紗灯台/ツツジ科ドウダンツツジ属)。
花に赤い筋が入って、これが更紗模様に似ているからというのが命名のいわれのようです。

ガクウラジロヨウラク(萼裏白瓔珞/ツツジ科ヨウラクツツジ属)。
近縁に、ウラジロヨウラク(裏白瓔珞)がありますが、ひげ根のような萼が目立たないだけです。
“瓔珞”は仏像が身につけている飾りで、花の様子が似ているからということです。
この木はルーザの森にも生えています。

オゼミズギク(尾瀬水菊/キク科オグルマ属)。
オゼミズギクはミズギク(水菊)の変種だそうで、地域限定で尾瀬や裏磐梯などにも咲いているとか。
これは大凹の水場付近のものです。
8月に入ってからの開花かと思います。

シラネニンジン(白根人参/セリ科シラネニンジン属)。
高山にあって、これを含むセリ科の植物はたくさんあります。
同定はむずかしいですが、花のつき具合や葉の形からしてシラネニンジンではと思います。

高層湿原に見られるツルコケモモ(蔓苔桃/ツツジ科スノキ属)。
赤くておいしい実がなるそうですが、実の頃を筆者はまだ見ていません。

湿地や高層湿原に見られるモウセンゴケ(毛氈苔/モウセンゴケ科モウセンゴケ属)。
食虫植物です。

ミネザクラ(峰桜/バラ科サクラ属。別名タカネザクラ/高嶺桜)。
日本のサクラ属の基本野生種10もしくは11のうちのひとつで、最も高いところに咲くサクラです。
6月半ば頃に中大巓から西吾妻山山頂にかけてところどころ見られます。
時期をぐっとおそくして見ることができるサクラというのもオツ(乙)なものです。

アカモノ(赤物/ツツジ科シラタマノキ属。別名イワハゼ/岩黄櫨)。やがて赤い実がつきます。
アカモノは赤い桃からの転訛(てんか)というけど、赤い物というこの命名の貧弱さはいかがなものだろう。

ベニバナイチゴ(紅花苺/バラ科キイチゴ属)。やがておいしい実をつけます。
名の“ベニバナ”はベニバナの(黄色に近い)花の色から来ているのではなく、紅花の花びらを摘んで乾かし、発酵させてできる紅(べに)や染料の元となる“紅餅”から来ているのではと想像できます。
紅餅は時間の経過にしたがって、この花のような黒味が入る赤になってゆきます。

7月はじめ前後に咲く白い花4種。

ナナカマド(七竈/バラ科ナナカマド属)。秋の紅葉の代表選手。

ウラジロナナカマド(裏白七竈/バラ科ナナカマド属)。
葉の先がナナカマドより丸みを帯びているので区別ができます。
ナナカマドの実で果実酒を作ったことはありますが、こちらのウラジロナナカマドの方は熟しても苦く有毒だということです。 知っておくべき知識かもしれない。

オオカメノキ(大亀木/レンプクソウ科ガマズミ属)。
紅葉の代表選手のひとつ。

マルバシモツケ(丸葉下野/バラ科シモツケ属)。
同じような赤花をつけるものがシモツケ(下野)という植物で、これが下野の国(今の栃木県)ではじめて発見されたことによる命名だそうです。その花に似ていることからの名です。

西大巓までたどり、ルートを白布峠へ向かったほぼ最終地点で、オオバミゾホオズキ(大葉溝酸漿/ハエドクソウ科ミゾホオズキ属)に会いました。
月山で見たきり、久しぶりでした。

それからひき続いて、ベニバナイチヤクソウ(紅花一薬草/ツツジ科イチヤクソウ属)に出会いました。はじめてのことなのでとてもうれしかったです。
我がルーザの森には白花のイチヤクソウ(一薬草)は確認済みなのだけれど、このベニバナイチヤクソウには是非会いたかったのです。
ずいぶんな数の株がありました。
なお、この “一薬” は全草を乾燥させたものを民間薬として使ったことからの名のようです。ものの情報では、利尿薬として、中国では避妊薬として使われていたという記述もありました。

西吾妻の代表的な花のひとつがハクサンシャクナゲ(白山石楠花/ツツジ科ツツジ属)です。
7月も第1週ぐらいになると、このハクサンシャクナゲの花が山に彩りを添えます。
西吾妻山山頂にいたるまでの道々もそうですが、筆者はこの花を愛でるために人形石より東の小凹や藤十郎方面に向かいます。それはまるで石楠花園であるかのようなとてもすばらしい景色が連続するからです。
株で若干のちがいを見せるこの白から濃いピンクのグラデーションは本当に美しいと思います。

キヌガサソウ(衣笠草/シュロソウ科キヌガサソウ属)。
葉が放射状に広がる直径が40センチほどもあるこの大きな花の群落に出会った時の驚きを今も忘れることができません。
全草がこんなに大きくしかも登山道のすぐ近くにあるのに、この場所を知っているひとはごくわずかの西吾妻通(つう)だと思います。
登山道で繁みになっているところをわずか下るところにあるのですが、その繁みの場所は特定されないように巧妙に隠されていますゆえ。この豪華にして清楚な美しい花をこのままずーっと守るためにはいいことだと思います。
荒らされたらたまりません。

ということで、以上、西吾妻の山開きからおよそお盆前ぐらいまでの花の数々を拾ってみました。やはり花は多種多様、西吾妻は高山植物の宝庫といっても過言ではないでしょう。

何度も何度も見ていれば花の名も少しずつ自然と覚えていくもの。そのひとつの花の名を知り、またひとつと知っていく喜び…、これが山歩きの魅力のひとつともいえると思います。

お盆以降の西吾妻の様子については、次回「西吾妻の彩り、秋冬篇」につづきます。

本日はこのへんで。
それじゃあ、また。
バイバイ!

 

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