森の生活

雪囲い

23日に初雪が降ったあとは気温が上がって雪のほとんどは消え、その後は小春日和。その晴れ間に、妻に助手をつとめてもらってモミ(樅)の木の雪囲いをしました。

このモミの木(正確には、ウラジロモミ=裏白樅)は吾妻山系の山深くで見つけた天然木の、その実生を移植したもの。トウヒ(唐檜)と並ぶ我が家の、もうひとつのシンボルツリーです。
植えてから20年くらいだと思うけど、よく育ちました。よく育って4メートルもの高さとなり、もはや素人がやる雪囲いの限界を迎えているのは事実。今年もあうだこうだと頭をひねって知恵を出しながらの約2時間の作業でした。

骨材としたのは近くの家の竹です(雪囲いの材料って、買えば意外に高いのです)。竹が豊富な東南アジアでは竹が建築の足場材にも使われているとのこと、雪囲いにも使えるはずともらってきていたのです。けれども、竹の表面は思いのほかすべすべで、縄を使って結わえても材(そっぺ板)はなかなか密着してくれなくてひと苦労(香港などの建築現場では、“なまし鉄線=番線”を使って捻って締めている模様)。

山や森で暮らす者にとって習得すべきロープワークが少なくともふたつあります。それは、“南京結び”と“男結び”というものです。

ひとつの“南京結び”、自分では“ロープジャッキ”と言っていますが、これはトラックの荷台に荷物を積んだ時に荷崩れをしないように、ロープで自在に締めつけるものです。はじめてこの結びに注目した時、たった1本のロープで、荷物を締めつけて動かなくするその威力に驚いたものでした。筆者にすれば今は、薪にする材木を積んだり、果樹コンテナを重ねたり、そして機械類の大きな荷物の運搬などにはとても重宝しています。
これは、憧れつつ教えてもらって試し、試しては忘れ、忘れては試してで何年もかけてようやく習得したことを覚えています(日常使いしないと身につかない。特に特殊なロープワークは)。

そしてもうひとつの“男結び”、これは庭師のスキルの基本中の基本です。もちろん、今回の雪囲いの主役は、これです。
ある物にある物を結わえて括りつける場合は、括りつけるに足る適当な長さの紐を用意して結ぶのが普通です。けれども“男結び”は、巻いている縄などのロープの端から次から次へと使い続け、必要に応じて無駄なく使えるということで優れています。このことも驚異。
いやあ、これも習得するのに大変でした。覚えては忘れ、忘れては覚えるののくりかえしで、実際筆者が使えるようになったのはここ5年くらい。どうしても覚えたくて、ヒュッテ内の柱にロープを巻きつけて、何度も何度も練習しました(笑い)。

さて、あと、どれぐらいの間、樹を守っていけるのだろう。
ウラジロモミすぐわきの樹上にあったカリン(花梨)が4個落ちてきて……。樹上に残るは1個。

下は、17日頃に行った板渡し。ガラス窓を積雪や屋根からの落雪の直撃から守るためのもの。

薪小屋へはベニヤ板の打ちつけ。薪小屋は普段は風を通す必要があるためすかすかの状態ですが、冬は雪の侵入を防ぐ目的で壁を作ります。
このベニヤ板は選挙ポスター掲示板に用いられていたものを自治体の選挙管理委員会を通してもらってきたもの(選挙が済んでからとはいえ、ポスターが張ってあるままのベニヤが外部に流出するのは自治体としては望ましくないのだろう、最近は多くの自治体が使用後のベニヤ板を管理し、入手は困難になってきている。この赤く塗ったものは2年前に近隣の町から入手した)。赤に塗ってあるのは意図的ではなく、黒の塗料が切れたから。ベニヤでも塗装するしないでは耐用年数にずいぶんと差が出るもの。1度塗って、10年は持ちます。

筆者の好きなイタヤカエデ(板屋槭樹)の幼木を近くの林から引っこ抜いて移植したもの。この黄葉って、何とも言えずきれいなんだよね。
去年までの雪囲いは円錐に組んでいたけれども、背も随分伸びて、今年は1本の棒を幹に添わせ、その棒を三方からの三角形で支える構造を取りました。ただここは家庭用除雪機で飛ばして雪を集める場所なだけに心配ではあるんだけれども。お願い、頑張って!

風林(ふうりん)と呼びならわしている目の前の林は、すっかり枯れ葉の絨毯。

近くの、現在の笊籬沼(ざるぬま)。2月になれば、凍ったこの湖面を縦横無尽に歩き回ります。
筆者とすれば、ヘンリー=ソローの“ウォールデン湖”に見立てたいのだけれど、周囲およそ100メートル、最大水深およそ100センチ、この小ささ浅さではあまりにも無理(笑い)。
雪が降り、降っては溶け、解けては降るを少しくりかえして、根雪になるのももうすぐのこと。